新卒に“破格”の高額年収も
「一寸先は闇」の苛烈な業界事情

 日本で唯一といってもいい驚異的な伸びを続けるソーシャルゲーム業界。異例の高額年収が話題になっており、12月1日から就職戦線に挑む2014年卒の就活生からも熱視線を浴びている。

 AKB48にEXILE、吉高由里子と、人気タレントが目白押し。今や、ソーシャルゲーム大手2社、グリーとディー・エヌ・エー(DeNA)のテレビCMを見ない日はまずないだろう。DeNAがプロ球団を買収したこともあり、ゲームに興味のない中高年層にも名は響いているに違いない。

 何しろ、今年こそ落ち着いたものの、ここ数年倍々ペースで売り上げを伸ばし、現在も3割を超える営業利益率をたたき出しているのだから、「電機が衰退し、自動車も陰りが見える中、日本が唯一世界で戦える産業」(業界幹部)と胸を張るのは無理もない。

 破竹の勢いを受け、2社は就職先としても人気企業の一角を占めるようになった。特に、両社が昨年から打ち出した新たな採用策が話題をさらった。

 DeNAが優秀なアプリ開発エンジニアに最高年収1000万円を支払うと発表すると、グリーも負けじと1500万円を打ち出したのだ。実際に、グリーでは「1400万円程度で内定を決めた学生がいた」(関係者)ほか、DeNAでも「額は言えないが、特別枠採用は数人実施した」(三原一晃・人材開発部部長)という。

 中途採用市場でも話題の中心は両社だ。20代のネット企業の幹部は「メディアに自分の名前が出ると、すぐに引き抜きの電話が来る」。ゲーム機メーカーのエンジニアには片方の社長から呼び出しがかかった。深夜に説得を受けたが、「真夜中まで働いている社員が多過ぎる」という理由で競合他社に入社したという話もある。

広がる社内“格差”
引き抜き合戦も苛烈

 なぜ、そこまでエンジニアが大事なのか。グリー関係者の1人は「ソーシャルゲームには在庫もなく、よいゲームを作るエンジニアが競争力の源泉。何に代えても確保したい」と説明する。サーチファーム・ジャパンの篠原光太郎常務は「エンジニアの報酬はしばらく高止まりする。米国と比べるとまだ低く、優秀な人材に関してはまだ伸びるだろう」と予測する。