個々のユーザーが140文字以内の“つぶやき”を投稿し、それを他のユーザーがフォロー(読者登録)することでコミュニケーションが発生するミニブログサービス「twitter(ツイッター)」が人気だ。国内のユーザー数もうなぎ上りで、今年1月に20万人だった利用者数(サイト訪問者数)が9月には257万人に急増している(ニールセン・オンライン調べ)。10月半ばには携帯電話向け公式サイトもオープンし利用者増に拍車がかかりそうだ。

 その最大の魅力の1つが、あるユーザーのつぶやきに対し、フォローしている人(フォロワー)が返答したり、そのつぶやきが引用され口コミ的に広がったりする「つぶやきの連鎖」だ。

 象徴するようなトピックスもある。例えばミリオンセラー歌手の広瀬香美さんが、経済評論家の勝間和代さんとのツイッター上のやり取りのなかで、twitterを表すアイコンである「t」をカタカナの「ヒ」と読み違え、それを見たフォロワーが「“twitter”は“ヒウィッヒヒー”と読める」と投稿。それを受け、広瀬さんが「twitterの源氏名はヒウィッヒヒーに決定」とし、そのつぶやきの内容が一夜にしてユーザーに広まった。広瀬さんは一躍ツイッター上でアイドル状態になり、その後8月にはテーマソング「ビバ☆ヒウィッヒヒー」を作詞作曲。ネット上で公開し、話題を呼んだ。

 「こうして有名人がツイッターを活用することは普及の追い風になる」と、『ツイッター140文字が世界を変える』の著者で、ネットPR活動を支援する「レゾン」の取締役も務めるいしたにまさきさんは話す。

 いしたにさん自身も、日常的にさまざまなつぶやきの連鎖を体験している。大きな事象で言うと、9月末に広告代理店勤務でアルファブロガーの佐藤尚之さんが鳩山首相と居酒屋で会食し、その様子をツイッター上でリアルタイム中継。そのつぶやきを知ったいしたにさんが冗談半分で「首相に著書を献本したい」と発信すると、それを見たフォロワーが知り合いの民主党議員に向けてつぶやき、その議員が「自分が首相官邸に届ける」とさらにつぶやいた。そして数日後、本は実際に官邸に届けられたのだ。

ツイッターの“つぶやき連鎖”をビジネスでどう活用するか
ツイッターの画面(http://twitter.com/fujiyacamera)。フジヤカメラはフォロワー数が約3000にも上る。

 ツイッターに注目し、企業が活用する事例も生まれつつある。朝日新聞、毎日新聞、Yahooショッピングなどが目立つが、注目すべきは中古カメラを販売するフジヤカメラ(東京・中野)の事例。レンズや本体の入荷速報のほか、店舗の周辺情報などもコンスタントにつぶやく。

 「店で張り紙をしたり、来店者に伝えるだけでは、情報の伝わり方は少数。一方、ツイッターでつぶやけば、不特定多数に瞬く間にどこまでも広がっていく。こういった接客ツールとしての活用は非常に効果的だと思いますね」と、いしたにさん。ツイッターの利点は瞬時に広まる「鮮度」と、フランクなつぶやきからかもし出される「親近感」。ネット上での効率的な“接客”には打ってつけのツールというわけだ。

 ただし、それがすぐに売上などの結果に結びつくわけではないと、いしたにさんは言う。「広告的な観点で使うと間違いなく失敗する。ユーザーコミュニケーションツールとして捉え、まずは信頼関係を作ることが大切でしょう」。

 最初は誰でもフォロワー数ゼロ。日々つぶやきを重ね、自らも積極的にフォローする数を増やし、返答したり、引用したりするなどし、地道に信頼関係を築くことで、ようやく一定のフォロワーがつく。そこで、ガツガツと広告を流すのではなく、従来のつぶやきの合間にセール情報などを少しずつ入れていく。そうした距離感に配慮した使い方がポイントとなるだろう。

 「ツイッターはコストはかかりませんが、距離感の保ち方なども含めたノウハウは必要。普及しつつある今から始めてノウハウを蓄積することが重要」と、いしたにさんは指摘している。

(大来 俊)