関西スーパーマーケットは首都圏地盤のスーパー、オーケー(横浜市)の買収提案を退け、エイチ・ツー・オー リテイリングを縁談相手に選んだ。この判断の陰で、ある幹部の“暗躍”が指摘されている。(ダイヤモンド編集部 名古屋和希)

関西スーパーがオーケーに
異例の「買収提案撤回」要請

オーケーの買収提案を退け、エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)の傘下入りを決めた関西スーパーマーケット。その陰でオーケー案排除に向けたH2O元役員の"暗躍"があったオーケーの買収提案を退け、エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)の傘下入りを決めた関西スーパーマーケット。その陰でオーケー案排除に向けたH2O元役員の“暗躍”があった Photo:JIJI、Kazuki Nagoya

「買収提案をもしも取り下げるのならば、オーケーに3カ月でも6カ月でも『優先交渉権』を与えるよう社内を説得しますよ」

 8月23日、東京都内のホテルで、現在買収騒動の当事者である4人が秘密裏に顔を合わせていた。出席者はオーケーの二宮涼太郎社長、関西スーパーマーケットの玉村隆司会長と両社の幹部である。その席上、関西スーパーのある幹部が、オーケー側に買収提案を撤回するよう、冒頭のような要望を投げ掛けた。

 買収合戦で揺れる関西スーパー。発端は6月上旬、オーケーが関西スーパーに対し、TOB(株式公開買い付け)による買収を提案したことだ。条件は当時の株価の2倍強の1株当たり2250円という破格のもの。これを受けて関西スーパーは特別委員会を設置した。それ以来、両社の経営陣が直接膝を交えて協議するのは、この時が初めてだった。

 正式な買収提案の撤回を要請する行為は極めて異例だ。関係者によると、オーケーはこの要請を拒否。「TOBの価格だけでもいいから取り下げてほしい」とこの関西スーパー幹部は再度求めたものの、オーケーが首を縦に振ることはなかった。

 それからわずか8日後の8月31日、事態は急展開を迎える。

 関西スーパーの福谷耕治社長とエイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)の荒木直也社長が記者会見し、関西スーパーがH2Oの傘下に入ると発表したのだ。オーケーは両社の開示で初めて、H2Oも関西スーパーに買収を提案していたことを知った。

 こうした経緯を振り返ると、冒頭の関西スーパー幹部の「優先交渉権」発言には違和感が残る。発表時期から逆算すれば、当時H2Oとの交渉は既に最終段階だったとみられるからだ。

 そのさなかで、買収案の撤回を要請するという行動に、オーケー関係者は、「優先交渉権を餌にわれわれをだまそうとしていた」と怒りを隠さない。