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11月22日 18時0分
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【US Market Strategy】Vol.2 米国株式市場のバリュエーション - 広木隆「ストラテジーレポート」

- 過大なリスクプレミアム、もしくは悲観過ぎる成長期待 -

結論:
1. 現在の米国株式市場の水準は割安である。
2. ダウ平均の目標株価は 14,380ドル (史上最高値更新)、S&P500は1,560ポイント としたい。

株価は将来得られるキャッシュフローの現在価値の総額であるという考え方がある。投資家が得られるキャシュフローで最も一般的なものは配当であろう。将来にわたる配当の流列を現在価値に割り引いて理論株価を求める配当割引モデル(Dividend Discount Model; DDM)は代表的な株価評価モデルのひとつである。配当は企業が稼ぐ利益の中から支払われる。配当という形で外部に流出する部分だけでなく、内部留保される利益もまた最終的には株主に帰属するものであるから、利益そのものを割り引いたものが株価であるという考え方もある。最終利益を割り引く割引率を資本還元率といい、M&Aを行う場合の企業価値評価では収益還元法と呼ばれている。尚、不動産の評価においても同じ収益還元法と呼ばれる評価モデルがあり、賃料というキャッシュフローを現在価値に割り引く考え方は株式の場合とまったく同じである。

収益還元法はPER(株価収益率)の概念と同じである。PERは資本還元乗数である。株価をP、最終利益をE、割引率をrとすると

式(1)

式(2)

rはPERの逆数であり、株式益利回りと呼ばれる。ここで、rは将来の利益を現在価値に割り引く還元率であり、株式投資における要求利回り、または期待リターンと捉えることができる。

1株当たり利益(EPS)が一定率gで成長するモデルを考える。

式(3)

式(3)は図1のように簡略化することができる。



割引率から成長率を引くことの意味は、利益成長期待の分だけEPSを割り引く分母を小さくすることができるということである。EPSをより小さな値で割り引くことは、すなわち株価を高く算定評価することになる。割引率は通常、無リスク資産の利回り(リスクフリーレート)に一定のリスクプレミアムを加えた形で表される(図2)。



ここでは無リスク資産利回りに米国の10年債利回りを使う。ジェレミー・シーゲル等の研究によれば米国株の長期債利回りに対するリスクプレミアムの平均は長期的に見て5%であるという。仮に米国株のリスクプレミアムが5%だとすると、現在の10債利回りは1.7%だから、割引率は6.7%ということになる。直近のトムソン・ロイターの調査によると、S&P500の12カ月先の予想EPSは109.6である。これを6.7%で割り引くと、

109.6 ÷ 0.067 = 1635

これは現在のS&P500の値よりも244ポイント(17%)も高い。この状態でさらに成長期待の分を減じて割り引く分母の数字を小さくしたら、理論株価はさらに高くなり、実際の市場価格との乖離が拡大することになる。これは何を示唆しているのだろうか。リスクプレミアム5%の仮定のもとで、市場価格や得られる予想利益を代入し、市場が織り込む利益成長期待を逆算するということであれば、答えは単純に「市場はマイナスの利益成長を織り込んでいる」ということになる。

例えば、成長率を▲1%とすると、分母は割引率6.7% - (▲1%)=7.7%となって

109.6 ÷ 0.077 = 1423

とほぼ現在の株価に一致する。もちろん、リスクプレミアムが長期平均より1%高い6%で、成長率ゼロと仮定しても同じ結果が得られる。
上述したのと同じ方法で、すなわち、リスクプレミアム5%の仮定を置いて、S&P500の月末値、予想EPS、10債利回りのデータから逆算して市場が織り込む利益成長期待の推移を表したのがグラフ1である(予想EPSはI/B/E/Sデータを使用)。



このモデルにおける利益成長期待というのは、短期間の業績の変化率というものではなく、長期にわたって達成・維持可能な成長率であり、名目GDP成長率に収斂すると考えることは合理的だろう。投資家が、このモデルに則して理論株価を考えるときに使用する長期的な利益成長の期待値として、その時々の経済成長率を当てはめるのは直感的に考えてもおかしなことではない。実際、1980年代後半からITバブルまでの高成長・高インフレの時期には、このモデルが織り込む利益成長を名目GDP成長率がうまく表している。ところがITバブル崩壊後の2000年代に入ると、むしろ実質GDP成長率とのフィットがよくなっている(グラフ2)。ITバブル崩壊で米国経済は一時的にリセッションに陥った。ディスインフの経済状況にあって、市場が名目よりも実質ベースで成長期待を織り込みにいった結果と考える。そしてリーマンショックを経て2010年代に入ると名目・実質どちらのGDP成長率とも乖離するようになった。GDP成長率はプラス圏に戻っても、成長率はマイナスのままである。市場は利益の成長を期待できなくなっている。



1株当たり利益(EPS)が一定率gで成長するモデルは「定率成長モデル」という。これに対して、企業のライフサイクル(成長段階)を考慮して、成長率がフェーズによって異なるモデルを「多段階成長モデル」といい、一般的には企業の成熟度に応じて成長率が低くなっていく。個別銘柄の評価においては企業のライフサイクルに応じて成長力が低くなるという仮定は現実をある程度うまく記述しているとも思われるが、ここでの議論は株式市場全体についてものだ。成熟期へ向かう企業もあれば、まだ高成長を続ける段階にある企業も存在する。株式市場全体で見れば常に新陳代謝が起きており、「多段階成長モデル」は当てはまらないはずだ。

然るに、過去20年近くの米国株式市場は「多段階成長モデル」で説明できるような推移となっている。評価モデルの成長率に、1) ITバブルまでは名目GDP成長率を、2)ITバブル崩壊からリーマンショックまでは実質GDP成長率を代入し、そして3)リーマンショック以降は成長率ゼロ、すなわちg = 0と置いて、S&P500の理論値を計算して、実際のS&P500と重ねたのがグラフ3である。



前述の通り、足元では理論値より現実の株価が17%低い。この先ずっとマイナス▲1%の利益成長が続く、すなわち企業の利益は増えずに減り続けると仮定するならば、この株価水準は正当化され得る。しかし、どう考えてもそれは悲観的過ぎるだろう。
米国株式市場が利益成長期待を織り込めない理由は以下の通りと考える。
1. 直近発表された7-9月期の決算は、リーマン危機後の回復期で初めて迎えた減益決算の見込みだった。米国株式市場は減益 – 利益が減る、ということに対する免疫が薄らいでいただけに、減益という事実に過剰反応している。実際の業績は直近のトムソン・ロイターの調べでは前年比フラットの水準まで回復している。
2. 減益決算見込みとなった理由はグローバル景気の減速であった。後から振り返れば7-9月期は世界景気が最も弱かった時期であることが確認できると思われるが、「景気は弱い」という見方を市場はまだ完全に払拭できていない。
3. そして、これが最も大きな理由だろう。それは政治の不透明さである。大統領選当日までオバマ大統領とロムニー候補の接戦が続き、両者の政策が真っ向から対立する構図を企業経営者とウォール・ストリートは見せつけられてきた。規制は強化されるのか緩和されるのか、減税は打ち切られるのか延長されるのか、暗中模索のなか、企業は設備投資や新規雇用を手控えざるを得ない。つまり、ビジネスが- 正確には先を見据えたビジネス・プランニングが - 凍結状態にあったと云っても過言ではない。
4. その延長線上に「財政の崖」の問題がある。大型減税の失効と歳出削減が同時にすべての項目で実施されれば、「崖」を転がり落ちるように米国景気はリセッションに突っ込みかねない。

しかし、市場を弱気にさせていた、これらの要因はすべてこれから好転していく。企業業績は7-9月期がボトムで10-12月期と2013年にかけて増益基調に戻る見通しが市場のコンセンサスである。マクロ景気についても、発表されている各種経済指標から見て米国並びに中国の景気が7-9月期に底を打ったと判断される。そして大統領選は終わった。企業経営者は、好むと好まざると、2期目となるオバマ政権の政策をベースにビジネス・プランニングを立て、そして実行していくしかない。止まっていたビジネスが動き出す。そして「財政の崖」も最終的にはオバマ大統領と議会の間で妥協案が見出されるはずである。

利益成長期待に対する過度な悲観が和らぎ、せめて期待成長率ゼロ、リスクプレミアムが過去平均並みの5%という仮定が成り立つならば、今の業績見通しのもとでは、ここから17%高い株価が正当化される。但し、市場がそのような楽観を取り戻すころには長期金利も上昇しているだろう。米国10年債利回りが2%、リスクプレミアム5%として割引率を7%としよう。期待成長率はゼロと置こう。S&P500の12カ月先EPS 109をを7%で割り引くと1557がS&P500の理論値となる。現状より12%高い水準だ。ダウ平均に同率を当てはめれば14,376ドル。史上最高値を更新する。株式相場の季節性からしても来年前半にもそれを目にすることがあり得ると考える。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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