エース中のエースが外資系企業に転職する危機感

竹内 エースと目される人はどうやって決まるんですか?入省したときから?

宇佐美 入省時点では横並びです。それが3~4年目くらいからだんだん差がつけられていきます。法令審査専門官という若手の登竜門のようなエースポストがあるんですが、同期40人のうち3、4人しかそのポストには就けません。そのポストに就く人が、同期の中でエースということになります。

竹内 それはどういう基準で決まるのですか?わずか4年で判断するわけですよね?

第2回 <br />外資系企業に転職するエース級官僚たち <br />民主党政権に若手職員が失望する理由宇佐美典也(うさみ・のりや)
1981年、東京都生まれ。暁星高等学校、東京大学経済学部を経て、経済産業省に入省。企業立地促進政策、農商工連携政策、技術関連法制の見直しを担当したのち、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)にて電機・IT分野の国家プロジェクトの立案およびマネジメントを担当。2012年2月に開設した「三十路の官僚のブログ」(現在は「うさみのりやのブログZ~三十路の元官僚のブログZ~」に改称)では、自身の給与や官僚生活を赤裸々に公開して大きな話題を呼んでいる。

宇佐美 それまでの仕事ぶりを見て、総合的に判断されている感じがします。「頭が切れる」というのは大前提なのですが、他には、「むやみに怒らず度量が大きい」「まわりから信頼されている」という点も大きいですね。あと無尽蔵に働ける体力があるかどうかも大事です(笑)。

竹内 わりと公正な人事ですね。社員が多い民間企業だと、勤務評定は上司の評価に依存しがちです。そうすると偏りが出てしまって、たとえ優秀であっても、若いときはなかなか抜擢されずに埋もれてしまうことがあります。経産省は同期が40人と人数が少ないからできるのかな?

宇佐美 人数が少ないので、間違って能力の低い人が出世ポストに就いてしまうようなことはほとんどありません。主流派に優秀な人が配置されるという意味ではしっかりとしたシステムだと思います。ただ、最近の問題は、出世ポストに就いた人が辞めてしまうことなんです。

竹内 出世ポストに就いて、将来が約束されているのに辞めてしまうんですか。何年目くらいで辞めてしまうんですか?

宇佐美 人にもよりますが、早い人で5、6年目、多いのは10年目くらいです。官庁のキャリア組は同期の結束が強いので、同期からしてみればエースが辞めるのはショックですよね。「お前がオレたちの代を支えていってくれるんじゃなかったのかよ」って感じで。

 私の場合は、良く言えば異端児、悪く言えばキワモノとして扱われていて、同期からも「宇佐美はいつか辞めるだろう」と思われていたので、実際に辞めても誰も驚きませんでした。ブログの件もそうですが、実は経産省に内定した後に留年していたり、係長時代に局長にタンカ切ったりと、塀の端っこを歩くような役人生活を送っていたので「ついに宇佐美は塀の外に落ちたか」という感じでした(笑)。

 竹内先生は東芝の中でどんな社員だったんですか?相当尖っていたと思うんですけど。

竹内 私は東芝時代にスタンフォード大学のMBAコースに留学したので、東芝へ戻ったら将来は経営に関わりたいと考えていました。

 ただ、技術というのはすごく移り変わりが早いんです。そうすると、たとえ主流となった技術を開発したとしても、その技術を使った事業が廃れてしまったら、それまで「100万石」だったとしてもアウトなんです。そういった先が読めない状況で出世の順番待ちをするのは辛いですね。同期が40人の世界と1000人の組織は全然違います。