あなたの広告宣伝費は投資ですか、
それとも原価ですか?

 顧客の絶対数が増えない以上、売上を上げるためには一人ひとりの顧客の満足度を上げ、一人の顧客から何度も買ってもらうしかありません。そのためには、みなさんが(企業ではなく)顧客の立場に立って、何度もリピート購買するお店や商品はいかなる理由なのかをしっかりと掴む必要があるのです。

 当たり前ですが、何度もリピート購買する理由は、商品やサービスそのものに魅力があり、私たちが支払ったお金以上の満足を(広告ではなく商品が)与えてくれるからです。つまり、広告宣伝は、最初に消費者が購買するきっかけにはなりますが、リピート購買などのような、長期にわたる購買とは関係なさそうです。

 ビジネスをストック化させるためには、企業が提供する商品やサービスそのものに、競争相手との明確な差別性を持たせ、消費者に対して価値を提供し、その価値を保証することなのです。

 それがすなわち、事業を正しく「ブランド化」させることになります。

投資は「顧客づくり」のため、
ブランド化は「リテンション」のため

 ブランドは、かつては企業が商品やサービスを高く売るための(企業側の)手法に過ぎませんでした。実際、古典的なブランド論の多くは企業側の視点で書かれていました。ブランド化のお題目の下で、商品やサービスになんら違いがないのに広告合戦が繰り広げられ、収支が悪化する状況を招いてきたのです。

 もし、自分のビジネスを競争相手と差別化し、顧客から支持される商品やサービスを提供すれば、広告宣伝を恒常的におこなわなくても、顧客は商品やサービスを継続的に購買してくれます。そして、このような戦略を組み立てれば、広告宣伝費は「原価」ではなく「投資」となり、安定的に儲けさせてくれるのです。

 たとえばAmazon.comのようなインターネット企業が、事業の立ち上げ期に多大な広告宣伝費を投下して、一気に垂直成長し、赤字にもかかわらず(将来に対する期待値から)株価が上昇、M&Aをテコに成長してきたのはまだ記憶に新しいですね。これは投資家が、Amazonの持つ価値、つまり、赤字が健全な赤字であること――多大な広告宣伝費は原価ではなく投資であることを見抜いたからでしょう。そこには、しっかりしたビジネスモデルが存在し、投下した広告宣伝費は必ず回収されるだろうという確信があったのです。

 投資は「顧客づくり」のため、ブランド化は顧客の「リテンション(維持、確保)」のためと覚えておきましょう。きっとみなさんのビジネスの役に立つはずです。


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