やっちまったかという思いでその記事を読みながら、途中で、ん、と首を傾げた。

 十一月十三日付けの夕刊に載った小さな記事は、帰宅途中の中国人留学生が何者かに襲われ、負傷した事件だった。現場は東大阪市の路上、被害者は二五歳になる中国人女性である。

 中国人が暴行被害を受けたと聞いてすぐに頭に浮かぶのは、尖閣諸島の領有権をめぐる日中間の争いが背景にあるのではないか――、ということだ。

 領土問題が大きく紙面に取り上げられ、多くの人が意識するようになったのは、二年前に起きた中国漁船による領海侵犯と海上保安庁巡視艦『よなくに』『みずき』への“体当たり”事件の頃からのように思う。

 中国漁船が執拗に体当たりを続ける映像はテレビのニュースでも流れたが、海上保安庁は停止命令を振り切って逃走を図った中国人船長を公務執行妨害で逮捕した。

 海上保安庁とは“海の警察隊”である。その巡視艦に体当たりを食らわしたというのだから、その時点で中国という国のお国柄と中国人の国民性を表していると言ってもいいのかもしれない。

 が、そのあとのお粗末な措置もまた日本のお国柄を表していた。
 那覇地方検察庁は、逮捕した船長を処分保留のまま釈放したのである。

 言うなれば、職質をかけたお巡りさんのパトカーに車をぶつけて逃走を図り、逮捕されても起訴されず、つまりは“お咎めなし”ということだ。どういった政治的判断をくだしているんだか。

 この裁定は、二〇〇一年に成田空港で北朝鮮の金正男の身柄を拘束したときと全く同じだった。正男は金日成の長男で、当時は後継者の最有力候補とも言われていた人物でもある。将軍さまの一族なのだ。