ネコの腎臓病治療薬に2億円超!寄付サイトに集まる愛猫家の熱すぎる思い写真はイメージです Photo:PIXTA

猫と切っても切れないのが腎臓病。愛猫家にとっての重大な関心事である猫の腎臓病治療薬について、期待できそうな研究が進んでいる。(フリーライター 武藤弘樹)

猫に宿命の腎臓病は「治癒せず、見た目で分かりにくい」

 ペットの病気は飼い主にとってとにかく心苦しいものである。人間の言葉を話すことができないペットらは無言で苦しみと格闘する。犬や猫で、体調不良を感じると飼い主の目の届かないところに隠れる子もいて、それが夏に暑い押し入れの中や冬に寒い部屋にだったりすると飼い主の心苦しさはいやが上にも増す。心底、「自分が代わりになってあげられれば」と思わされるのが、いとしきペットの病気の常である。

 国内でもっとも多く飼育されているペットといえば犬と猫がツートップで、飼育頭数でいえば2017年に猫が犬を上回って以来、その状態が続いているようだ(猫は多頭飼いの世帯が多いため、飼育世帯数は犬の方が多い)。

 筆者は犬、猫ともに飼育経験があるが、猫の飼育で特に気を使わなければならないのが腎臓の状態であった。

 猫は腎臓がめっぽう弱い。現在家庭で飼育されているイエネコの祖先は、砂漠で暮らす生き物で、飲み水の量が少なくても生きていけるように腎臓の機能が発達していた。具体的には腎臓が尿を濃縮して体内で使える水分を増やすのである。砂漠で生き延びるために必要な環境適応であったろうが、腎臓に負担がかかりやすい弱点もあった。

 そして現在のイエネコにもこの腎臓が引き継がれている。特に高齢になると腎臓を患う猫は増え、これに関するデータはいろいろ見つかるのだが、「15歳以上の猫のうち30%が慢性腎臓病(腎不全)にかかる」「高齢猫の死因第1位」などと言われている。

 猫の腎不全の正確な原因は分かっていない。「なぜかかるのか」が特定できない上に、進行度合いは検査をしなければ測れず、目に見えないところで相当進行していることが多いから厄介なのだ。

 さらに重ねて厄介なのが、一度ダメージを受けた腎臓はそこから回復しないということ。だから治療は、基本的に回復ではなく病気の進行を遅らせる方向で施される。

 これらのことから、猫を飼うということは猫の腎不全と向き合うということでもある。猫の腎不全は宿命であり、飼い主はその摂理の前になすすべなく猫に最善の奉仕を尽くすしかなかった。

 しかし、この度、そんな猫の腎臓病の治療薬の開発が進み、いよいよ来春にも臨床試験が始まるというニュースが入った。