いまから2週間ほど前になるが、11月14日深夜(アメリカ東部時間)、向こう5年の中国を牛耳る中国共産党中央の新しい政治局常務委員会がやっと表舞台に姿をみせた。ワシントンの自宅で、インターネットで伝えられたこの一幕を見てベッドに入った。

政治改革の可能性は
本当に下がったのか

 中国研究を職業とする人間にとって、中国の動向を分析するに当たって、共産党大会は常に最も重要なイベントの一つであったが、「18大(中国共産党第18回全国代表大会)」ほど注意深く見守ったことはこれまでなかった。原因は二つあった。

 一つは、熾烈な権力闘争の展開を背景に、最高指導部たる政治局常務委員会の人事が、最後の最後まで決められなかったことである。つまり、これまでの党大会でも権力闘争が展開されていたが、今回ほど熾烈でしかもなかなか決着がつかなかったことはなかった。

 もう一つの原因は今回の党大会で発足した新指導部の政策次第で中国の行方、つまり中国がスーパーパワーとして本格的に台頭するか、または「中所得国の罠」に陥り、政治的にも経済的にも大きな混乱に陥るかが決まるとみているからである。ちなみに、私がこの仕事を始めたのは1990年であったが、それ以降の党大会はその後の中国の成り行きにある程度の影響を与えたが、その影響は主として具体的な政策、なかでも経済政策に対するものであった。

 民主化につながる政治改革に踏み切る可能性という視点からみて、改革志向が最も高く能力的にも高い李源潮氏と汪洋氏が今回、最高指導部たる政治局常務委員会入りを果たせなかったことには、ちょっとがっかりした。しかし、両氏がメンバーから外されたことだけで、政治改革の可能性は急激に下がったと判断するのは妥当ではないと思う。