金融庁に静かな激震が走っている。

 その震源は、少しも静かでない亀井静香大臣の矢継ぎ早に打ち出す政策にあるのではない。いや、確かにモラトリアム法案は、金融界に少なからぬ影響を与えている。だが、これまでの亀井大臣の政治手法を知っている者ならば、それが落としどころを見極めた戦術の一種であることに気づいているだろう。

 今回、金融庁のより震央で発生した問題は、大臣自身が決断した別の事案にある。

 2週間前、亀井大臣は、これまで記者会見場で開かれていた大臣会見を、自身の大臣室で開くことに決めた。正確には、会見室と大臣室の2箇所で開くことに決めたと言ったほうがいいだろう。

 毎週火曜日と金曜日、亀井大臣は金融庁16階にある記者会見場で、新聞、テレビなどの記者クラブメディア対象に大臣会見を開く。通常の大臣ならばこれで終了だ。ところが亀井大臣は違う。

 記者会見を終えたばかりのその足で、17階の金融担当大臣室に向かう。そこにはフリーランス、雑誌、ネット、海外メディアなどの記者が待っている。彼はそこで、今終えたばかりの記者会見をもう一度やる羽目に陥っているのだ。

 この信じがたい非効率の発生した原因ははっきりしている。記者クラブが亀井大臣の仕事を邪魔しているのだ。

会見開放を阻止した
記者クラブに亀井大臣が激怒

 「運営に支障を来たす可能性が高いので記者会見をオープンにすることはできない」

 記者クラブからこのような回答が亀井大臣のもとに届いたのは2週間前のことであった。

 いきさつを話そう。政権発足直後、筆者は亀井大臣とともにテレビ朝日の情報番組「ワイドスクランブル」に出演した。コマーシャルの間、筆者は繰り返し亀井大臣に苦情を述べた。

 「なぜ金融庁は、私たちのようなフリーランスの記者に対して、取材する機会を与えてくれないのか」

 亀井大臣は「そんなことはないはずだ。自由に入れるだろう」と返す。だが、再三の説明に納得したのだろう、筆者からの“陳情”を受け入れて早速動いたのだ。

 翌日、金融庁から連絡が来た。記者会見への出席を許可するというものだった。