知財部門が紐帯となってホンダ全体の事業展開力とブランドの強化に

「ホンダにある技術系、マーケティング系の“すべての知財”を一括管理します。そこには技術革新のアピールマネジメントやブラックボックス化されたノウハウなども含まれています。全生産台数の8割を海外で売るホンダにとり、ブランドと知財の管理は生命線でもあるのです」(別所室長)

事業に関わる技術・マーケティングのすべてに知財部門が関わっていく(「ASIMO」の例)

 1990年代後半、世界的な自動車業界の再編と共に年間生産台数が400万台に満たないメーカーは淘汰されるという「400万台クラブ」説が流布された。ここで個性が埋没するのを危惧したホンダは、2003年頃から現在のような知財組織への変身を始めた。

 例えばヒューマノイドロボット「ASIMO」では、(1)2足歩行に象徴される特許技術、(2)ネーミングに象徴される各種の商標やブランド、(3)ASIMOから応用された技術(クルマの横滑り防止装置や作業アームロボットなど)の管理、といった関連する分野にすべて関わっていく。

 ネーミング案の作成ではテクニカルネーミングコミッティを組織し、ロゴの運用ガイドラインも決めている。つまり訴求すべき新技術に適正な名称が確実に付与されるように関係部門と協調していくのである。こうした努力の結果、ホンダへの「先進創造企業イメージ」は77.4%(2002年)から78.8(2011年)へと着実に上向いている。

 また研究開発部門のプロジェクトでは必ず、各種の部門プロジェクトリーダー(PL)と同列に特許PLを置き、他社とのアライアンス提携や技術移転などで知財部と連携する仕組みをつくっている。

 別所室長は、「知財部門がなんとかするのではなく、知財部門が紐帯となってホンダ全体の事業展開力とブランドの強化にあたる。煩わしいことは知財部門に任せるという体質では企業の筋力が落ちます」と語る。

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