『採用基準』が出版されたが、マッキンゼーの「卒業生」のなかでいまもっとも注目される社会起業家が小沼大地氏である。小沼氏は、なぜ社会起業家に転じたか。『採用基準』の著者、伊賀泰代氏との対談で社会を変えるリーダーについて語ってもらった。

ミッションは途上国を支援するとともに、日本企業の人材育成

伊賀泰代(以下、伊賀):本日はよろしくお願いたします。早速ですが、小沼さんの活動について、教えていただいてもよろしいでしょうか。

「青臭さ」で社会を変えるリーダーになる<br />小沼大地
(こぬま だいち)
特定非営利活動法人クロスフィールズ代表理事。一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊(中東シリア・環境教育)に参加後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年3月、NPO法人クロスフィールズ設立のため独立。会社員時代より社会貢献活動に関心を持つ社会人向けのコミュニティCompass Pointを主宰。2011年10月には世界経済会議(ダボス会議)のGlobal Shapers Community(GSC)に選出される。

小沼大地(以下、小沼):はい、こちらこそよろしくお願いします。現在、クロスフィールズというNPO法人を運営して2年目になります。「留職プログラム」という事業を展開しています。「留職」とは造語で、大企業の方が数ヶ月間、途上国のNPOに赴き、本業で培ったスキルやリソースを活用して現地に貢献していただくという、ビジネス版の青年海外協力隊のような活動です。また途上国に貢献するだけでなく、日本人のグローバルに活躍できる人材の育成や新興国向けビジネス開拓に繋げることで 、現在の閉塞感漂う日本企業を明るくする突破口になるんじゃないか思ったんです。つまり、派遣する企業側のメリットと途上国の課題を同時に達成する、win-winの事業を目指しています。

伊賀:小沼さんの活動は、途上国の問題解決と、日本企業の人材育成という、ダブルミッションを持っているわけですよね。敢えて言えば、ふたつのどちらが主要な使命なんでしょう?ご自身ではそもそもどちらの問題意識が先にあったんですか?

小沼:日本企業の方です。我々のミッションは、日本の企業が、社会の未来と組織の未来を切り拓くリーダーを育成していく手伝いをすることなんです。

伊賀:その点がとてもユニークですよね。そして、まさに私が『採用基準』で書いたことと同じなんです。途上国の問題を解決するためのNPOを立ち上げる方はたくさんいらっしゃいます。でも日本の大企業の中に、グローバルなリーダーシップがとれる人を育てるというミッションをもって、NPOを始める人は凄く珍しい。そこが今、小沼さんの活動が注目されている理由だと思います。