パソコン市場が縮小する中で、台湾のパソコン大手のエイスースが注目を集めている。わずか10年前までは部品メーカーにすぎなかったが、水面下で設計技術やデザイン力を磨き続け、近年はユニークなノートパソコンを相次いで発表。米グーグルと開発したタブレット「NEXUS 7」のヒットを追い風に、日本市場でのシェア拡大も視野に入ってきた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之、後藤直義)

 10月23日午後、米国ニューヨークは摩天楼が立ち並ぶマンハッタンの一角にあるイベント会場「Espace」。人気手品師とともにステージに登壇した男が、なんとも不思議なパソコン(PC)を披露すると、報道関係者からいっせいにストロボがたかれた。

 「Taichi」(太極)──。陰と陽の二つの力の融合をイメージした商品は、正面から見ると最薄部の厚さ約3ミリメートル、重さ1.25キログラムの極薄のノートPCだ。しかしクルリと背面側に回転させると、ピアノのような漆黒の天板がパッと一面に光を放つ。世界で初めて、表裏両面に液晶ディスプレイを配したノートPC兼タブレット型端末なのだ。

 「『Taichi』は、あなたのまたとない友人になりますよ」。自信たっぷりに話す男の名前は、台湾大手PCメーカーの華碩電脳(エイスース)の創業者、施崇棠(ジョニー・シー)会長。旧来のデスクトップやノートPCの市場が縮小する中、独自カテゴリーを開拓してはヒット商品を生み出している(表参照)。

 その一例がタブレットだ。2010年に米アップルが「iPad」を発売してタブレット市場は急拡大。今年の出荷台数は1億5000万台に迫るとみられ、デスクトップPC(推定1億2800万台)のみならず、頭打ちのノートPC(同1億9500万台)の市場も1、2年内に追い抜くことがほぼ確実視されている(テクノ・システム・リサーチ調べ)。