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アマデウスたち

上田泰己
生命の全容に迫る優しきリーダー

週刊ダイヤモンド編集部
【第7回】 2007年11月30日
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上田泰己氏
写真 加藤昌人

 生物は、「時計」を持っている。ヒトが朝目覚め、昼は活動的になり、夜に眠りに落ちるのは、この時計が24時間のリズムを生み出しているからだ。

 体内時計は生命における時間の内的な表現例であり、その解明は、分子の階層から行なわれている。生命システム全体を知りたいから、ここから始めた。すでに時計の機能を持った遺伝子のネットワークを特定、光で細胞の時計を操ることもできるようになった。しかし、「細胞を分子からつくることができて初めて、生命を真に理解したといえる」と野心的だ。

 科学や哲学への目覚めは早く、生命に向き合う医学部進学は必然だった。科学に針路を定めると、博士課程に入ると同時に製薬会社の契約研究員となり、プロジェクトを率いた。理化学研究所の教授職に当たるチームリーダーに抜てきされたのは、修了前の27歳のときである。

 あれから4年。メンバー1人ひとりの話に聞き入り、穏やかな物腰を決して崩さぬリーダーシップ像は極まり、落ち着きさえ増している。理が勝る青白い秀才ではない。生命科学の本質から目をそらさず、体系的かつ現実的に研究のプロセスを組み立てる高い能力に、年長者すら敬服する。

 順風満帆の人生ではなかったはずだ。埋まることのない空虚を抱え、悲しみや寂しさに震えたことのある人間にしか持ちえない、柔らかな優しさが、漂っている。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)

上田泰己(Hiroki Ueda)●生命科学者。1975年生まれ。東京大学医学部卒業、医学系研究課程修了。在学中に山之内製薬の契約研究員となり、2003年から現職の理化学研究所発生・再生科学総合センターのチームリーダーを務める。同研究所のゲノミクスユニットリーダー、大阪大学理学部招聘教授、徳島大学客員教授などを兼務。

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