行政は「典型的」であることを認めず、「特殊事例」と強調する宮城県石巻市の商店街で発生したアスベスト飛散事故。現在進行中の後始末の工事にも多くの問題が指摘されている。

厚労省“お墨付き”除去計画に疑問

 10月23日、石巻保健所はこの間報じてきた飛散事故を起こした、石巻市の商店街にある元店舗に散乱するアスベストを、改めて除去する工事の届け出を受理した。環境省が所管する大気汚染防止法(大防法)に基づくこの届け出は、アスベスト除去工事を開始する2週間前に提出することになっており、11月6日から工事ができることになる。

 アスベストの除去工事についての届け出は、大防法の届け出のほかに、厚生労働省が所管する労働安全衛生法石綿障害予防規則で義務づけられた届け出も必要となる。提出先となる石巻労働基準監督署は新たな工事に関して、「個別の案件についてはお答えできない」と一切取材に応じないが、労基にも同じ日に提出されたはずだ。すでに報じたとおり、前回下請けとしてアスベスト除去工事を受注したが、適切に除去できず飛散事故の原因をつくった株式会社環匠(埼玉県川越市)が今回の工事を直接受注し、計画の届け出もしている。

 今回の対策工事は、まず半壊の建物周辺に足場を組み、現場全体をテントのようなもので覆う。テント内をプラスチックシートで養生し、負圧除じん機で作業区域内の空気を負圧にして、場外へのアスベストの飛散を抑制する。これによって作業区域で発生したアスベスト粉じんは、負圧除じん機に設置された高性能フィルター(HEPAフィルター)によって取り除かれ、きれいな空気だけが外に排出される。

 こうした対策をした現場に、原発内作業で使う宇宙服のような防護服と防じんマスクを装備した作業員が入り、取り残したアスベストの除去をしたり、アスベスト混じりのコンクリートガラを高圧水で洗浄したりして片付ける。洗浄したコンクリートガラは通常の産業廃棄物としてリサイクルなどに回す。発生した水は水処理設備でろ過し、再び高圧洗浄に利用する。水処理後の汚泥は飛散性アスベストとして処分するのだという。

 石巻保健所や石巻市によれば、この除去計画を決めるにあたって、労基と保健所、市、事業者の4者で協議した。そこで労基が中心になって、どのような対策をするか指導したのだという。

「労基が市に対してきちんとカネをかけて対策するよう強い調子で求めていた」との関係者の証言もあり、労基が通常よりも厳しく対応していたことがうかがえる。また石巻労基は技術的な内容について、宮城労働局経由で厚労省に照会したうえで適切だと判断した。つまり厚労省のお墨付きを得た計画なのである。こうした事情もあって石巻保健所でも「とくに問題はない」と判断し、指導などはしなかった。

 だが、関係者から聞き取った計画概要をアスベスト除去の専門業者らに伝えると、安全性を疑問視する声が相次いだ。