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インキュベーションの虚と実

宝を見出せる米投資家は何をやっているのか
間違いだらけの新事業開発【市場理解編】

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第16回】 2012年12月10日
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前回はOpportunity Recognition(ビジネス機会の特定、以下OR)、つまり事業のチャンスを捉えることについて議論したが、日本の大企業で、この入口で躓いているケースは多い。

 スタートアップのエコシステムにおいて、日本の大企業は、市場の理解が乏しい、いや市場を理解することがどういうことか気づいていないことすらしばしばだ。だからイノベーションのエコシステムに入っていけないのだ。

 一方、米国のトップクラスのベンチャー・キャピタルは、ポテンシャルのある分野を読み、チャンスをとらえる力がある。

 今回は、具体例やエピソードを交えて、この両者の違いが何かを噛み砕いてみたい。

ベンチャー・キャピタルは
チャンスをどうとらえるか?

 米国でトップクラスのベンチャー・キャピタルは、ほぼ例外なくフォーカスを定めてチャンスを探求している。グーグルへの投資などで著名なセコイア・キャピタルは、1980年代にはネットワーク機器の分野にチャンスありと探索し、シスコシステムズと3COMに投資して、大成功した。つまり、それぞれの時期でここがポテンシャル大という分野をとらえ、他に先駆けて戦略的にその分野での投資機会を追求するのだ。

 筆者の古巣であるGeneral Atlanticは、1980年代にシステム・マネジメント・ソフトウェアに注目した。この分野では中小規模のソフトウェア企業が分散していたが、合従連衡が必然であるとの仮説のもと、LEGENT Corporationに投資してそこを受け皿として、数社に投資し、M&Aすることで成長を加速させた。

 次に、企業向けアプリケーション・ソフトウェアにフォーカスし、かつ同分野での国際化が本格化すると予見して、オランダのBAANなどに投資して米国展開を支援して成功を収めた。

 General Atlanticでは、セクター毎にチームを編成して専門性を高め、外部の関係者や有識者、関係企業との議論を継続するとともに、テーマを設定してマーケット・マッピングなどの調査を行っている。そして、

・持ち込まれる案件は打率が低いため、自ら投資案件をサーチする
・長期的テーマは、適切な時期が来るまでレポジトリーに置いて、定期的にレビューする
・自らの戦略に合致した企業にのみ投資する
・魅力的な市場分野によい案件がなければ、自ら企業を創造する

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本荘修二 [新事業コンサルタント]

多摩大学客員教授、早稲田大学学術博士(国際経営)。ボストン・コンサルティング・グループ、米CSC、CSK/セガ・グループ会長付、ジェネラルアトランティック日本代表を経て、現在は本荘事務所代表。500 Startups、NetService Ventures Groupほか日米企業のアドバイザーでもある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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