200%の公的債務を
支えられるのか

 少し前、債務危機に苦しむイタリアの政府関係者と議論する機会があった。「イタリアは財政問題で大変ですね」と挨拶代わりに話しかけたら、「お前に言われたくない」というような返事が返ってきた。正確な言い方をすれば、「日本は日本の仕事をすればよいのではないでしょうか」といった発言であったが、「お前に言われたくない」というのが、この方の気持ちを表しているような気がする。

 日本はGDP比で200%を超えるような公的債務を抱えている。一方のイタリアは120%程度である。公的債務の規模で見れば、日本のほうがはるかに深刻に見える。それでもイタリアの国債は金利が上昇しており、厳しい対応を求められている。日本の国債金利(10年もの金利)は0.7%近くという、世界最低の水準になっている。この違いはどこにあるのだろうか。

 よく言われるように、イタリアの国債はその多くを海外の人が持っているが、日本の国債は日本人が持っている。この違いがあるので、200%程度という公的債務があっても大丈夫だ、そう主張する市場関係者が多い。

 政府は40兆円以上の財政赤字を出し続けており、それは基本的には新規の国債発行で賄われている。つまり、毎年巨額の借用証書を出しているのだ。幸いなことに、市場にはお金がジャブジャブにあって、その行き場がない。これが国債購入に回る。

 預金はいくらでも集まるのだが、それを融資する貸し出し先がなかなかない。結局、国債で運用するしかない──多くの金融関係者はそう言う。お金があるので国債は消化でき、経済はうまく回っているように見える。