リーマンショックが中国在住の外国人にどれほどの影響をもたらしているのだろうか。居留許可を持つ外国人は上海だけでも13万3340人(「上海統計年間」、07年)。国際都市と言われる上海の、外国人をめぐる雇用の変化に注目した。

 昨年10月27日、筆者は機上で「CHINA DAILY」に掲載された記事を興味深く読んだ。タイトルは「Crisis? Not yet, say expats」(危機?駐在の外国人曰く「いや、まだだ」)。

 「同じ企業でも母国の企業に勤めているよりまだまし」、「中国にいたおかげで、負債も不動産投資もなくて済んだ」というように、その記事からは多国籍企業の駐在員がまだまだそれを楽観している様子が伝わってきた。中国人経営者に雇用されている欧米人でさえも、物価の安い中国で切り上がった人民元の恩恵を謳歌しているかのようだ。当時、中国在住の外国人は「本国の危機からだいぶかけ離れている」と、まだ対岸の火事として受け止めていたのだ。

 ところが、外資依存型の上海では金融危機の影響が顕在化している。とりわけ、雇用面での縮小は避けられない。ハドソン・リクルートメント(*1)が行った調査(858社が回答)からは、2009年第1四半期において従業員の増加を計画している企業は34%、昨年同期の61%からに大幅に減少したことがわかる。他方、従業員の減少を検討している企業は昨年同期の1%から今期は8%に増加した。数年にわたり上海の企業を悩ませ続けてきた「人材獲得難」から一転、先進国同様、金融、鉄鋼、自動車、物流、不動産などの業界でレイオフを覚悟しなければならない時代に突入した。

 「上海統計年鑑」によれば外資による直接投資の契約数は07年末累計で4万8753件(香港、マカオ、台湾含む)に達した。また、上海、北京などでは多国籍企業の「地区本部」(リージョナルヘッドクォーター)の誘致が進んでいるが、上海市対外経済貿易委員会のサイト「Investment Shanghai」によれば、上海のそれは08年3月末時点で603を数えるまでとなった。

(*1)国際的な人事・人材コンサルティング会社。参考にした「The Hudson Report Hiring and HR trends China」は主に中国の多国籍企業を対象にしたもの。