住宅ローンを組む際、「毎月返済額」で考えると危険!

 さらに、変動金利型ローンには、身の丈以上のお金を借りてしまう危険性もあります。

9割以上の人が選んでいる!?金利が<br />1%未満の「変動金利型ローン」の落とし穴深田晶恵(ふかた あきえ)  ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年、北海道生まれ。外資系電機メーカーを退職後、96年にFPに転身。日本経済新聞、日経WOMAN、日経ビジネスAssocie等でマネーコラムを連載中。国土交通省「住宅ローン商品改善ワーキングチーム」および「消費者保護のための住宅ローンに係る情報提供検討会」、住宅金融普及協会「住宅ローンアドバイザー運営委員会」委員を歴任。こうした委員会で金融機関と不動産事業者に住宅ローンのリスクの説明を義務づけるガイドライン作りを提唱するのが目下のライフワーク。主な著書に『30代で知っておきたい「お金」の習慣』『「投資で失敗したくない」と思ったら、まず読む本』他多数。
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 住宅ローンを組む際、多くの方は「自分がちゃんと返済できそうかどうか」を「毎月返済額」で考えます。「毎月10万円なら返していけそう」「月々15万円だと、家計が苦しくなりそうだな」などというように、今の生活に重ね合わせてイメージしやすいためでしょう。

 しかし月々の返済額が同じであっても、選ぶ金利タイプによって借りられる額は大きく変わります。たとえば35年ローンで、毎月返済額を11万〜12万円と仮定した場合、金利2.5%で借りられるのは3200万円。これが金利1.0%だと、4000万円も借りられることになります。

 「毎月11万〜12万円くらいなら返済できる」などと判断するのは、危険です。変動金利型の場合、当初の金利が約束されているのはたった6カ月間だけですから、「毎月11万〜12万円ずつ返済していけば予定した返済期間で完済できる」保証はどこにもありません。先に見た通り、金利が上がればローン残高の減りは遅くなります。60歳になって「ローン残高が1500万円も残っていた……」という悲劇が起きるおそれのあるローンを「返せるローン」とは言えないでしょう。

 また、金利が上昇して返済額が再計算され、毎月の返済額がアップすれば、日々の家計も回らなくなるおそれがあります。ちなみに、35年ローンで4000万円借りた場合、金利を2.5%で計算しなおすと、毎月の返済額は14万円を超えてしまうのです。もし金利が上がった時に返済が苦しくなるおそれがあるなら、それは「借り過ぎ」ということ。借入額は、金利が上昇した場合でもスムーズに返済できる範囲にとどめておかなくてはなりません。

 私がFPとして3000件以上の家計を見てきた経験から言うと、一般的な世帯年収が600万〜700万円前後の会社員の方の場合、4000万円は借りすぎです。かなりの頻度で繰上げ返済をしなければ、60歳完済は難しいでしょう。厳しい言い方かもしれませんが、その年収であれば、無理なく返せる借入額は3000万円が限度です。それ以上借りてしまうと将来に不安が残ってしまいます。