ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
【特別寄稿】東京理科大学大学院イノベーションレビュー

技術経営の視点から日本企業の強みを考える

伊丹敬之 [東京理科大学大学院イノベーション研究科 教授]
【第3回】 2012年12月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

モジュール化とEVの潮流は
自動車産業を変えるか?

 第1回では日本のエレクトロニクス産業の凋落、これを招いた背景について技術経営の観点から説明しました。消費者向けエレクトロニクスメーカーの動向は注目の的なので、日本全体に自信喪失のような気分が広がるのは無理のないことかもしれません。日本企業の経営力に対する信頼感低下から、自動車など他産業の将来についても不安視する見方が出ています。

 確かに、不安材料がないとは言い切れませんが、私自身は決して悲観する必要はないと思っています。エレクトロニクス産業の中でも日立や東芝などの重電系メーカーは苦しい時期を通り抜け、グローバル競争力を高めているように見えます。また、東レをはじめとする素材産業の存在感も増しています。以下ではいくつかの産業について、技術経営の観点から課題を指摘するとともに、日本企業の強みについて考えてみたいと思います。

東京理科大学教授 イノベーション研究科長
伊丹敬之

 自動車産業では、モジュール化と電気自動車(EV)という2つの大きな潮流が押し寄せています。

 まず、モジュール化については、「日本メーカーが強みとしてきたアセンブリ(最終組立)の付加価値が低下するのではないか」と懸念する声があります。少ないモジュールを組み合わせてクルマをつくるようになれば、完成車ラインが生み出す付加価値は以前より低下するかもしれません。

 しかし、その付加価値はモジュールをつくる部品メーカーに移行します。日本の大手部品メーカーはその能力を蓄積しており、自動車産業全体で見ればモジュール化の影響は中立的でしょう。むしろ、大手部品メーカーにとっては、海外の完成車メーカーとの取引を拡大するチャンスかもしれません。

 ただ、注意しなければならない点もあります。日本企業の多くで起こりがちなのが、開発現場が目の前のテーマにこだわり特殊部品を使いたがること。「この部品でなければ性能を発揮できない」という部分最適に走りすぎれば、コスト競争力の低下を招きます。そのため、多様な車種を俯瞰するポジションに強力なCTO機能を持つ必要があるでしょう。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

伊丹敬之 [東京理科大学大学院イノベーション研究科 教授]

1969年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、72年カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了・PhD。一橋大学商学部専任講師、助教授などを経て、85年教授。一橋大学商学部長、同大学大学院商学研究科教授などを歴任後、2008年より現職。IT戦略本部、バイオテクノロジー戦略会議など政府関係委員を多数歴任。2005年11月紫綬褒章を受章。著書に『経営学入門』(共著、日本経済新聞社)、『経営戦略の論理』(日本経済新聞社)、『よき経営者の姿』(日本経済新聞出版社)、『経営を見る眼』(東洋経済新報社)、『イノベーションを興す』(日本経済新聞出版社)『本田宗一郎―やってみもせんで、何がわかる』 (ミネルヴァ書房)など。■東京理科大学大学院イノベーション研究科


【特別寄稿】東京理科大学大学院イノベーションレビュー

あれほど強かった日本企業がなぜ――。半導体、エレクトロニクス産業の現状を見て、そんな思いを抱く人は多いだろう。この疑問を解くカギが技術経営(MOT)である。日本企業復活の出発点は、過去の失敗を正しく認識し、そこから学ぶ姿勢を持ち続けることだろう。今回、その学びを先導してくれるのが、東京理科大学大学院イノベーション研究科研究科長の伊丹敬之教授である。伊丹教授の誌上講義を、3回シリーズでお届けする。

「【特別寄稿】東京理科大学大学院イノベーションレビュー」

⇒バックナンバー一覧