2013年は、ドル円相場の転換点となりそうだ。歴史的な円高局面は、終焉する可能性が高い。要因は、米国の景気回復と日本の国際収支悪化。前者は日本経済にとって明るい材料だが、後者は喜べない。また、円安は輸入物価の上昇という負の面も持つ。少なくとも、円高が終われば万事解決、ではない。

 10月に東京で開催された、国際通貨基金・世界銀行年次総会(IMF・世銀総会)が、為替相場に意外な影響を与えている。

 同総会には、ヘッジファンドなどの海外投資家も多数出席していた。「総会出席を機に、貿易赤字の構造化など、日本のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)への理解が急速に広がり、円売りを仕掛けやすくなっている」(池田雄之輔・野村證券チーフ為替ストラテジスト)。

貿易赤字定着と経常収支悪化で<br />浮上する“悪い円安”のリスク総選挙後は、安倍総裁が打ち出した超金融緩和策の〝実現可能性〞が市場に問われることになるはずだ
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11月15日以降、ドル円相場は急変し、12月6日時点で1ドル82円まで円安が進んでいる。言うまでもなく、安倍晋三・自民党総裁が、2~3%のインフレ目標、無制限の金融緩和、マイナス金利、日銀法改正、建設国債の日銀引き受けなどに言及したことが理由だ。

 もっとも、この「安倍相場」は長続きしない、というのが市場関係者の間ではほぼ共通見解である。

「主に海外の投機筋が驚いて反応している」(田中泰輔・ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー)面が強く、短期的な動きに終わるとみられているからだ。

 日銀はさらなる金融緩和に追い込まれるのが必至だが、これが円安への原動力になるかは疑問だ。結局のところ、ドル円相場のトレンドを決める最大の要因は、米国の景気と金融政策だからだ。

 ただし、2013年を通して見れば、これまでより円安基調となる可能性が高い。