さえない若者の人生を変えたアメ車<br />使命は日本人が持つ偏見の解消<br />ティムスター社長 鳥井恒彦
ティムスター社長 鳥井恒彦(撮影:宇佐見利明)

 昨年から続く円高で、日本中が不安定な為替に一喜一憂するなか、密かに注目されるのが逆輸入車だ。逆輸入車とは日本の自動車メーカーが海外で生産・販売するクルマを並行輸入した新車・中古車のこと。米国車、いわゆる“アメ車”と逆輸入車を専門に扱うディーラー「トレンドオート」を経営するティムスターの鳥井恒彦はこの商機に「アメ車への正しい理解」の普及に熱意を燃やす。

 「米国が人生を変えるチャンスをくれた」。高校卒業後、不動産会社で働くもバブルがはじけわずか一年で退職。目標もなく暇をもてあそぶ鳥井を見かねた、ニューヨーク在住の伯母に「米国にでも来て、世界を見てみたら?」と勧められた。観光にも飽きた頃、再度伯母の勧めで語学学校に入学する。英語はまったく話せなかったが、ベネズエラ人の友人ができ、日英辞典と英西辞典を駆使して会話をつないだ。英語のおもしろさに目覚め、ロサンゼルスの大学へ留学。いろいろな国の学生がいる環境は刺激的で、プレゼンやスピーチ中心の授業をこなし成績はトップクラスに。一方、日本で中古車ディーラーを営む兄に頼まれ、アメ車の仲介を手伝い始めた。鳥井自身、高校時代にガソリンスタンドでアルバイトをしていたこともあって、いろいろなクルマに接するたびにクルマへの憧れは増した。

 大学卒業後は複数の貿易会社で働いた後、帰国。兄の下で店舗拡大を手伝い、2年間で3つの新店舗を立ち上げた。