日本が逃げられない脱炭素時代の資源争奪戦、圧倒的有利な中国への対抗策Photo:PIXTA

脱炭素を実現するために必要な資源の確保が欠かせない。世界各国で資源の争奪戦になると予想されるが、日本はどのような戦略をとるべきなのか。(マーケット・リスク・アドバイザリー代表 新村直弘)

欧州のガス危機や環境問題の表面化で
脱炭素のぜい弱性が明らかに

 欧州から始まった脱炭素の動きは、米国でバイデン政権が誕生したことで加速した。日本も欧米の動きに追随する形で、脱炭素の動きを加速させようとしている。

 しかし、脱炭素は経済合理性がなくとも環境負荷が低いエネルギー源へ強制的に変更することだ。これは市場の需給バランスを著しく歪める上、ぜい弱性がある。

 例えば、風力発電に急シフトした英国で昨年、風が吹かずに風力発電の稼働率が上がらず電力不足が表面化。これを補うために火力発電の燃料である天然ガスの需要が急増したことをきっかけに、欧州全体で天然ガスの需給がひっ迫する「ガス危機」が起こった。

 そこにウクライナ情勢が緊迫化する地政学リスクも加わり、ロシアから天然ガスの供給を受ける欧州ではガス危機は続いている。

 そのほか、発電燃料としてパーム油の生産を増やすためにインドネシアで森林が大規模に伐採されたように、脱炭素をめぐってはこれまで想定していなかった環境面での問題も顕在化し始めている。

 脱炭素のぜい弱性を意識した影響からか、欧州委員会は持続可能な経済活動を分類する制度である「タクソノミー」について、再生可能エネルギーを中心とした脱炭素社会への移行を促進するための手段として、原子力や天然ガスも一定の役割があるとの見解を示した。

 脱炭素に急シフトする中で顕在化した問題を受け、世界は脱炭素社会の実現に向けた「現実路線」に切り替える可能性もある。

 いずれにせよ、脱炭素社会を目指すトレンドに変化はないだろう。数年単位で脱炭素に必要な資源の需要が増加するというのがメインシナリオといえる。そこで、今回のコラムでは需要増加が予想される鉱物資源について焦点を当てたい。