米民主党大統領予備選の“戦後処理”は予想以上に紛糾しそうだ。

 6月3日の最終戦の結果、バラク・オバマ上院議員が歴史的な激戦を制して勝利宣言にこぎつけたことを受けて、焦点はすでに副大統領候補選びに移ったが、敗れたヒラリー・クリントン上院議員の処遇を巡って、党の中枢が真っ二つに割れているためだ。

 争点は、いわずもがな、クリントン氏の副大統領候補指名の是非である。

 オバマ陣営内には、クリントン氏を副大統領候補に選ぶべきではないとの声が根強い。5ヵ月に及ぶ泥仕合――特にオバマ氏暗殺の可能性を示唆する発言――で増幅された感情的な「ヒラリー・アレルギー」もさることながら、なにより変革者を標榜するオバマ氏のイメージを損ねるというのがその理由だ。

 民主党のある関係筋は、「あれだけワシントンのオールドポリティクス(古い政治)を批判しておきながら、元ファーストレディのクリントン氏をホワイトハウスに招くことは、自己矛盾以外の何ものでもない」と手厳しい。選挙戦終盤にオバマ氏支持に回った、ジミー・カーター元大統領も、CNNとのインタビューで、「最悪の組み合わせ」と酷評した。

 だが一方で、クリントン陣営からは、ここまで接戦を演じてきたクリントン氏の副大統領候補指名を“当然の権利”として求める声が燎原の火のごとく広がっている。特にクリントン氏の元側近らが立ち上げたプロジェクト「VoteBoth(2人に投票を!)」の動きは活発で、オバマ&クリントンの“ドリームチケット”(夢の組み合わせ)の実現を求める1万人以上のサポーターたちが署名活動をネット上で展開。党大物議員への働きかけを強めている。

 米ウォールストリートジャーナル紙によれば、黒人向けCATV、ブラック・エンターテインメント・テレビジョンの創業者であり、大物黒人実業家のロバート・ジョンソン氏も、ドリームチケット実現に向けて、党幹部の説得に動き始めたという。