12月16日に行われた総選挙の結果は、自民党294議席、民主党57議席となり、自民党の完勝となった。わが国は、当面の舵取りを、自民党の安倍総裁に委ねることになった。大敗した民主党・野田政権の評価は、後世の史家に委ねるべきだと思うが、閣議の議事録公開等、地味ではあるが大切な政治のインフラ作りに正面から取り組んだ点は、それなりに評価されて然るべきであろう。なお、投票率が10%も落ち込んでしまったことは、誠に残念である。

日本の政策課題は
規制緩和などの成長戦略

 新政権に私たちは何を望むのか。直面する日本の政策課題は何か。

 日経新聞(12月16日朝刊)に、「年末エコノミスト懇親会」の会場で行われたアンケート調査(有効回答数119名)の結果が紹介されていた。それによるとトップ3は、「規制緩和などの成長戦略」「財政再建の道筋作成」「年金など社会保障改革」となり、わが国社会の長期的な経済構造の改革を期待する意見が上位を占めた。次点は「TPPへの参加」であり、「円高対策」や「原発再稼働」は、これらを下回った。要するに経済の専門家は、抜本的な構造改革を求めているということだ。

 筆者も、この点については大筋では異論はないが、政府に果たして成長戦略が描けるのかどうか、という点については、疑問の余地があると考える。

 20世紀後半のわが国は、キャッチアップ型経済であり、そのロールモデルはアメリカであった。戦争で灰塵に帰したわが国経済を復興するためには、まず、ベースとなる電力・鉄鋼を再建し、最終的にはアメリカのような自動車産業を育成することが必要である、という共通の認識が、広く国内で共有されていた。

 先行事例が豊富に海外にあって、GDP大国を目指すという明確な目的があり、その達成手段も同様に明確であれば、政府が成長戦略を描くのは容易である。それどころか、優秀な官僚にとっては、最も力の発揮しやすい理想的な環境であったということが言えよう。