明日に迫った大統領選挙では、財閥に対する規制や中小企業の保護など「経済民主化」が最大の争点となっている。文、朴両候補とも、経済改革を訴えているが、成長と雇用を維持しながら、構造改革を進めるという困難な課題が待っている。

韓国大統領選挙で問われているもの(下)<br />求められる「財閥牽引型成長モデル」からの転換<br />――日本総合研究所上席主任研究員 向山英彦むこうやま・ひでひこ
中央大学法学研究課博士後期過程中退、ニューヨーク大学で修士号取得。 証券系経済研究所を経て、1992年さくら総合研究所入社し、現在日本総合研究所調査部上席主任研究員。専門はアジアのマクロ経済動向分析、韓国経済分析、アジアの経済統合、アジアの中小企業振興など

 日本の総選挙が終わり、韓国の大統領選挙がいよいよ明日19日に迫った。前回、韓国で「経済民主化」と福祉の充実が求められている背景を明らかにしたが、19日の大統領選挙では、財閥に対する規制や中小企業の保護など「経済民主化」が最大の争点となっている。

 はたして次期政権において、財閥の経営および財閥中心の経済構造が大きく変わるのだろうか、それともさほど変わらないのだろうか。世界市場で韓国企業と競争する日本企業にとっても、このことは大きな関心事であろう。

「経済民主化」をめぐって活発な議論が展開されるなかで、国民のなかには雇用問題を優先すべきとの意見がある一方、改革の必要性を認めつつも、財閥グループの存在があまりにも大きいため、改革の難しさを指摘する声も少なくない。足元で景気が減速していることもあり、いずれの候補が次期大統領になっても、難しい政策運営を迫られるのは間違いない。韓国経済はどこへ行くのか。

すでに始まっている
「経済民主化」の動き

 突如出てきた感がする「経済民主化」という言葉であるが、じつは憲法で規定されている。「国は均衡ある国民経済の成長および安定と適正な所得分配を維持し、市場の支配と経済力の濫用を防止し、経済主体間の調和を通じた経済の民主化のために、経済に関する規制と調整をおこなうことができる」(119条2項)。