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国税局直轄 トクチョウ(特別調査部門)の事件簿
【第4回】 2012年12月20日
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上田二郎 [元国税調査官]

妻名義の休眠口座で脱税した内科医(3)
簿外預金か否か、調査に踏み切る根拠が足りない!

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妻名義の銀行口座に溜め込まれた1700万円の現金。この口座は除外した売上を振り込んだ簿外預金なのか、それとも申告に上がっているものなのか、調査を行うだけの根拠が足りない。それでも、調査官の勘は「これは簿外預金だ」と言っている。調査に踏み切るべきかどうか、その結論は!?

口座復活を証明する「ATMを使った1000円の入出金」

 休眠口座が復活する場合や口座売買屋から買った口座の動きの特徴として、「ATMを使った1000円の入出金」と呼ぶ特徴のある動きをする場合がある。この動きは人間の行動性向からくる口座の動きだ。

 口座を復活させたり口座売買屋から口座を買ったりすると、口座が実際に使える口座なのか、そうでないかを確かめるために、最初に1000円をATMで入金して確かめる人が多い。そして、その場で直ぐに出金して、口座が使えるかどうかを確かめるのだ。

 H医師の妻名義の口座も全く同じ動きをしていた。「ATMを使った1000円の入出金」が復活口座を証明していた。マルサで覚えた口座の動きの特徴の一つだ。

 しかし、この口座がH医師の確定申告に反映(売上に上がっている)しているかどうかの判断は難しい。調査の着手前に、H医師の総勘定元帳を確認することは出来ない。確定申告した内容や過去の調査実績及び税務署で保有している資料から、口座が確定申告に反映している口座であるかどうかを判断する必要があった。

 個人の確定申告の場合、決算書の貸借対照表(資産負債調)に当座預金、定期預金、その他の預金と預金別に残高を記載する欄があるが、各々の預金の合計額を記載するため、口座別の明細が無い。

 法人税の申告書であれば、預貯金の明細があって預金口座番号別に残高が記載してあるため、この口座が申告に反映しているかどうかの判断がつく。税務署ではこれをと公表口座(申告に反映している口座)と呼んでいた。

 しかし、個人の申告では、これを預金ごとの合計で記入するために、納税者が複数の預金口座を使用している場合には、残高を見ても公表口座の判断がつきにくい。H医師の貸借対照表には「その他の預金」に6500万円の残高があると記入されていた。

 「その他の預金」には普通預金や通知預金、外貨預金までも含まれてしまう可能性がある。しかも、売上2億円を超えるH医師が、普通預金を1口座しか使っていないことは考えられない。

 診療報酬の振込口座、カード振込用の口座、融資返済口座など、少し考えただけでも複数の口座が思い浮かぶ。まして、銀行もペイオフなどに備えて分散利用しているケースも多く、普通預金を5~6口座を使用していることが当たり前と考えられた。

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    上田二郎(うえだ・じろう) [元国税調査官]

    1964年生まれ。東京都出身。
    83年、東京国税局採用。千葉県内及び東京都内の税務署勤務を経て、88年に東京国税局査察部に配属。その後、2年間の税務署勤務があるものの、2007年に千葉県内の税務署の統括国税調査官として配属されるまでの合計17年間を、マルサの内偵調査部門で勤務した。09年、妻の実家を継承するために東京国税局を退職したが、縁あって再び税理士として税務の世界につながっている。


    国税局直轄 トクチョウ(特別調査部門)の事件簿

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    普通は見逃してしまうような、小さな違和感から調査の端緒をつかみ、張り込みや潜入調査によって脱税者を追いつめていく。17年間に渡り、マルサで活躍した元国税調査官が明かす特別調査部門の実力とは?

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