一般用医薬品(大衆薬)の販売資格である登録販売者の試験をめぐり、不正が相次いでいる。11月には西友が大規模な不正受験を行ったことを公表したが、今後も同様の事例が増える可能性は高い。早急に対策を講じなければ、登録販売者制度の崩壊を招きかねない。

西友の不正は氷山の一角<br />揺らぐ薬の登録販売者制度高齢化により膨れ上がる医療費を軽減する目的で始まった登録販売者制度だが、不正受験が相次いでいる
Photo:JIJI

「この書類にハンコを押しておいてください」

 大手ホームセンターの医薬品売り場に勤める薬剤師のAさんは約2年前、上司に呼ばれて2枚の紙を渡された。

 その紙とは、従業員が医薬品販売に従事したことを証明する「実務経験証明書」で、後述する医薬品の登録販売者試験に必要な書類である。

 だが、上司から渡された証明書の一枚はシャンプー売り場の担当者、もう一枚は日用品売り場全体を管理するマネジャーのものであり、両人とも医薬品販売に従事などしていない。

 Aさんは当初、虚偽の証明を拒んだが、「無理やり捺印させられた」という。

 改正薬事法が2009年6月に施行され、一般用医薬品(大衆薬)の販売資格である登録販売者が新設された。医薬品を副作用リスクが高い順に第1類~第3類と分類し、登録販売者は第2類(風邪薬や解熱鎮痛剤等)と第3類(ビタミン剤や整腸剤等)の販売が認められた。

 登録販売者試験を受けるには、薬剤師の管理下で医薬品売り場に毎月80時間、1年以上継続して勤務したことなどが要件となっており、それを証明する実務経験証明書の都道府県への提出が義務付けられている。