いまや国内試合としては異例の人気
レース中のさまざまなドラマが魅力の駅伝

 スポーツで今、多くの人が注目するのは日本の選手やチームが世界に挑む試合だ。今年でいえばロンドン五輪のメダルが期待できる競技であり、サッカーはW杯アジア予選。プロ野球も日本シリーズで巨人の日本一が決定した第6戦こそ視聴率が20%を超えたが(関東地区23.3%)、レギュラーシーズンの試合は10%前後だった。が、日本の3連覇がかかる来年3月のWBCは高視聴率を記録するはず。国内の選手やチーム同士の対戦では、それが日本一決定戦であってもコアなファン以外はあまり注目されなくなっているのだ。

 そんな中、唯一の例外が箱根駅伝だ。位置づけとしては大学の駅伝日本一決定戦のひとつにすぎない。出場する選手には将来の日本長距離界を担う者もいないわけではないが、多くは世界とは縁のないランナー。視聴者にとっては顔も名前も知らない選手ばかりだろう。にもかかわらず中継は高視聴率をとる。今年行われた第88回大会は往路27.9%、復路28.5%だったように常に30%近い視聴率を記録する超人気イベントだ。

 多くの人が自宅でくつろぐ1月の2日と3日に行われること、新春の東京―箱根間を往復するという舞台設定も大きいだろう。だが、母校のために必死でたすきをつなぐランナーの姿、1区間20キロ前後という長丁場ゆえに起こる思わぬブレーキやごぼう抜き、遅れたためにたすきがつなげず一斉スタートさせられるチームの無念等々、レースに介在するさまざまなドラマが見る者を惹きつけずにおかないのだ。

 今回の箱根駅伝は優勝争いという点から見て前回までとは別の意味で面白くなりそうだ。

 前回までの3年間は5区山登りで絶対的な強さを見せた東洋大の怪物・柏原竜二を中心に展開されたといえる。柏原は1年時の85回大会でいきなり5区に抜擢された。1位から4分58秒差でたすきを受けると猛烈なペースでグングン登り、なんと8校をごぼう抜き。それまで5区で抜群の強さを見せ「山の神」とさえいわれた今井正人(順天堂大-トヨタ自動車九州)の持つ区間記録を47秒も更新し、往路逆転優勝、東洋大を初の総合優勝に導く衝撃の箱根デビューを飾った。