「今年のバレンタインは、本格的な高級チョコレートで勝負する。そして、対前年比120%を目指す」(そごう・西武)

 一昨年から続く不況の影響を受け、店舗閉鎖が相次ぐなど苦悩の続く百貨店業界。先日、全国百貨店協会が発表した『平成21年12月全国百貨店売上高』は、前年同月比-5%と22ヵ月連続のマイナスとなった。15ヵ月振りにマイナス幅が5%以内に好転したものの、依然厳しい状況であることには違いない。

 そうした状況下で、百貨店の“希望の光”となっているのが冒頭で触れた『バレンタイン商戦』だ。不況下にも関わらず、「ここ数年(チョコレートの)マーケットは拡大し続けて」(松屋銀座)おり、今年も各社が過去最高の出店数や長めの会期を設定している。また、デフレで高額商品が売れないと言われているにも関わらず、「高級チョコレートが飛ぶように売れる」(そごう・西武)と、多くの店舗が高級・本格チョコレートの展開に力を入れている状況だ。

 しかも、今年はバレンタインデー当日が日曜日のため、一見“義理チョコ”需要が減少するように考えられるが、「(バレンタイン当日が)日曜日であることが、売上減の理由にはならない」(プランタン銀座)と強気の姿勢を見せている。

 一体なぜ、不況・デフレ下でありながら、百貨店のチョコレート商戦は好調なのだろうか?

バレンタインの意味が変化?
“第3のお歳暮”へ

 まず、理由の1つとして考えられるのは、バレンタインの“意味合い”が変化してきたことだ。

 これまでバレンタインといえば、「女性から男性へチョコを贈る」ものであり、「女性が好きな男性に贈る」“本命チョコ”と「父親や会社の上司などに配る」“義理チョコ”が慣例化されていた。しかし、ここ数年、そのトレンドに変化が表れている。

 江崎グリコが全国の中学生からOLまで500人の女性を対象に2009年に行ったアンケートによると、「今年のバレンタインにチョコをあげる相手は?」との問いに「彼氏」「告白したい男性」と答えた人は43.2%。一方で、「女友達」と答えた人は74.0%と、“本命”を圧倒していた。

 つまり、「女性から女性へ」チョコレートを贈る“友チョコ”という概念が“本命”を凌ぎ、定着しつつあるようなのだ。