社会科の基本は地理

陰山 巻末に本当につけたかったのは地図なんです。多くの人は、日の丸、君が代のことは熱心に言われるけど、もっと本質的な領土の問題は扱わない。今まであまり関心が持たれてなかった。そのため、尖閣、竹島も教科書に載っていなかった。僕はずっと以前から日本地図に非常にこだわったんです。

和田地理ってあんまり好きじゃなかったです。

陰山 そうでしょうね。どうしても暗記中心になってしまうから。でも、社会科の基本は地理です。北は寒いというだけじゃなく、南もうんと南まで行けば南極に近づいて寒くなるとか、地理的な観点で動ける人になってほしい。巻末の地図には国立公園も世界地図も入れている。

 いま、国立公園の授業なんか、ないでしょ。日本が火山国であるとか、松島は島がいっぱいあるから津波の被害がほとんどなかったとか、地理の知識がないと社会で起きていることを理解できない。日本の自然とか地形の重要なところが国立公園に指定されているので、これを知っておくことは必須です。日本と世界を知っているグローバル人材、ビジネスマンでいてほしいという、そういう想いがある。

 僕自身、小学校で指導要領に則った授業のほかによくおまけの授業をやるんですが、その中に必ず領土の授業を入れています。僕の教え子は尖閣、竹島をかならずやっている。1時間だけ「こういうところがあるよ」と教えるだけですから、ほとんど覚えていないでしょうけど。中教審の委員になって地理が話題になったとき、僕は「日本の領土のことを勉強しなくて、それで地理か」と言いました。それが受け入れられて、いまの中学校の教科書には領土問題の記述がある。今回の尖閣、竹島問題には間に合ったんですね。

和田私は大人になるまで尖閣、竹島問題を知りませんでした。国立公園も習わなかったし……。私の手帳に入れているのは地図ではなく、鉄道路線図なんですよ。営業マンだから全国を回るだろうと。これが意外に便利だと言われて。全国の新幹線、在来線、地下鉄路線図を載せたんです。