前回は老後の生活資金の確保、つまり「自分年金」づくりにおける投資の必要性をお話ししました。投資経験のない人には一見ハードルが高そうですが、「自分年金」づくりで大切なのは日々の情報収集を必要とする短期投資ではなく、じっくりと腰を据えて臨む長期投資です。長期の資産運用は意外とシンプルで、基本原則といった「知恵」を理解していれば十分です。その「知恵」を活用して、長期投資を実践する際に基本となるのは株式と債券なのですが、今回はまずは株式について触れたいと思います。

株式は資産形成のメイン・エンジン

 株式は預貯金と違い元本保証ではないため、資産を増やすどころか減らすことを心配する人が多く、特に日本人はこの傾向が強いようです。オヤジ世代以上は1980年代後半のバブルを社会人として経験しているので、株式は上がることもあると認識していると思いますが、ポスト・バブル世代である40代前半より若い人にとっては、株式は乱高下するもの、もっとネガティブな人では、下落するものといったイメージが強いのではないでしょうか。

 しかし、株式は投資において最も基本的な資産の一つで、資産形成のメイン・エンジンなのです。実際、共通データがある1988年1月から2012年9月までの実績(円ベース)を見ると、確かに日本株式(TOPIX)の平均リターンは年率約▲2%程度と低迷していますが、グローバルで見ると米国(S&P500指数)は約8%、新興国(MSCIエマージング・マーケット指数)は約11%と大きなプラスのリターンとなっています。

 株式はこのように大きなリターンを期待できる半面、リスクが高いのが難点です。企業が倒産した場合、残った財産から返済されるのは税金や従業員の給料、次に銀行等の貸付金の順で、これらをすべて支払った後に残ったものが株式の投資家、つまり株主に返ってくるのです。このように株主は倒産した際のリスクが大きいため、高いリターンを得られる可能性がないと、そもそもその企業の株式には投資しません。