中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り2018年9月11日の会談の様子 Photo:TPG/gettyimages

ロシア側は今や「プーチンの顔をいかに立てるか」が停戦実現の最大の課題となっていて、機能不全に陥っている。それが、「権威主義体制の国」の有事の際のもろさだ。もう一つの「権威主義体制の大国」である中国の動向はどうなっているのか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

ロシアはなぜ停戦しない?権威主義体制の課題

 ウクライナとロシアの停戦協議が続いている。ウクライナは、北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する見返りとして、国連安全保障理事会の常任理事国とドイツ、トルコ、ポーランド、イスラエル、イタリア、カナダを保証国とする安全保障体制の構築を提案した。

 これは、ロシアが最低限、絶対に譲れない「ウクライナのNATO加盟」を阻止できるものだ(本連載第299回)。ウクライナが中立化を受け入れる提案をしたことで、それは達成される。

 それなのに、なかなか停戦の合意に至らない。

 ロシアとしても、国際社会から孤立し早く停戦したいはずだ。国際決済システム(SWIFT=国際銀行間通信協会)からも排除され、ロシア国債がデフォルトの危機に陥るなど、経済制裁は確実にロシアを苦しめ始めている。

 なぜ停戦できないのか。今、ロシア側は停戦合意を、プーチン大統領の撤退ではなく、いかに戦果を上げたという形とするかを模索しているからだ。「プーチンの顔をいかに立てるか」が停戦実現の最大の課題となっている(本連載第299回・p3)。

 ロシアのような「権威主義体制」は、有事では機能不全に陥るもろいものだということだ。指導者は常に正しく、絶対間違わない「無謬性」が権威となるので、政策の間違いを正すのが非常に難しい。時には、政権を倒す体制変革、最悪の場合武力による革命が必要になってしまうのだが、その時に多くの人々の生活や生命が犠牲になってしまう。

 そこで、もう一つの「権威主義体制の大国」である中国の動向に関心が集まっている。中国も「権威主義体制」ゆえに、ウクライナ紛争では身動きが取りづらい状況にある。

 ロシアとウクライナの仲介役になり得る要素を中国は持ちつつも、慎重で曖昧な立場を取るべき理由がいくつかあるのだ。