経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第21回】 2013年1月8日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【公文俊平氏×武田隆氏対談】(前編)
2050年のソーシャルメディア。
公文俊平のS字波に映る未来とは…?

昨年から始まったこの連載も、気づけば20回を超すロング企画となりました。今回から連載名を「ソーシャルメディア進化論2013」と改め、ひきつづきエイベック研究所 武田隆氏をホスト役に多彩な顔ぶれのゲストをお招きしてお送りしていきます。
2013年最初のゲストは、情報社会学者の公文俊平先生。先生が提唱する「S字波」を現在の社会にあてはめてみると、この先何十年かのうちに私たちの環境がどのように変化していくかを見通すことができるという。さて、その“水晶玉”に映し出される未来の社会のカタチとは……?

社会はS字のかたちで変化する

武田 公文先生は、2004年に出版された『情報社会学序説』のなかで、ソーシャルメディアの世界的流行を見事に予言されていますね。

 先生は社会の変化を、S字のかたちをした波、すなわち「S字波」で捉えられるとおっしゃっています。S字波というのは、まるで占い師の水晶玉のようですね。それをのぞくと、未来だって見ることができる。

公文 たしかにそういった見方もできますね(笑)。

 S字波の基本的な考えは、社会のなかのさまざまな事物は、新しい事物がゆっくりと現れる「出現」、急速な成長によって世の中に普及する「突破」、過剰な期待や信頼が訂正されて定着に向かう「成熟」の、3つの局面に分けることができるというものです。

武田 この3つを、横軸に時間、縦軸に事物の規模や普及度をとってグラフ化すると、アルファベットのSのようなかたちになるんですね。

公文 自動車や家電、高齢化やインターネットの普及をイメージするとわかりやすいかもしれません。この過程に当てはまる気がしませんか?

 ここで、世界の文明の流れについて段階を追って見てみましょう。人類が狩猟採集の技術や言葉を手に入れた「始代文明」、原始的な信仰が生まれた「呪術文明」、都市や国が生まれ生産力が高まった「古代文明」、今でいう宗教が発展した「宗教文明」、そして16世紀ごろからヨーロッパが先導するかたちで始まった「近代文明」が来ます。

武田 いまは、近代文明の成熟期なんですね。

 

 
公文俊平(くもん・しゅんぺい)
多摩大学情報社会学研究所所長/多摩大学教授。
1935年高知県生まれ。1957年東京大学経済学部卒、59年同大学院修士課程修了。1968年米国インディアナ大学経済学部大学院にてPh.D.取得。東京大学教養学部教授を経て、1993-2004年国際大学グローバル・コミュニケーション・センター所長。2004年4月より多摩大学教授・多摩大学情報社会学研究所所長就任。現在に至る。主な著書として、『情報文明論』(1994年、NTT出版)、『情報社会学序説』(2004年、NTT出版)、『情報社会のいま』(2011年、NTT出版)など。他に共著として、『文明としてのイエ社会』(1979年、中央公論社)、『情報社会学概論』(2011年、NTT出版)がある。

公文 そうです。近代文明の根底にある価値観は、進歩主義と手段主義が中心になっています。進歩主義では、世界は進歩が可能で、進歩は良いものだと捉えています。そして、進歩するには科学や技術などの「手段」をうまく使っていくことが必要だ、と考えています。総じて、人間中心で、人間が豊かに、幸せになることを推し進めているのが近代です。

武田 たしかに。現代は、そういう考え方が中心になっていると感じます。近代化もS字波でできた水晶玉で見れば、やはり「出現」「突破」「成熟」の3つの局面に分けて整理することができるのですね?

公文 そうです。近代化ではS字波のそれぞれの局面がほぼ200年ごとに現れ、ある特定のパワーが集中的に増進します。出現局面では「軍事力」。突破局面では「経済力」。成熟局面では「知力」が大きな意味を持っているのです。その動きに合わせて、これまで存在しなかった新しい種類の社会的集団やメンバー、そして新しいパワーを獲得し、発揮するための場として機能する「社会システム」が出現します。

武田 近代化のそれぞれの局面において、具体的には何が起こったのでしょうか。

公文 出現局面では「国家化」が起こりました。正規軍や領土・領民からなる「国家」が力を持つようになったのです。突破局面では、さまざまなものが機械化、商品化され、「産業化」が進みました。「企業」が力を持つようになったということです。そして、1950年ごろから始まった成熟局面では、インターネットとソーシャルメディアに代表されるコミュニケーション技術の革命の中で、情報を操る個人たちが力を持つ「情報化」が進んでいます。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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