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8人に1人が苦しんでいる!「うつ」にまつわる24の誤解 泉谷閑示

間違っていませんか?―「ウツ」の人への接し方
――「うつ」にまつわる誤解 その(15)

泉谷閑示 [精神科医]
【第15回】 2009年5月13日
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 「うつ」で療養中の人に対して、ご家族など周囲の人から「どう接したらよいのでしょうか?」「何か注意すべきことはありますか?」といった質問を受けることがよくあります。周囲の方たちにとってみれば、「うつ」の状態の心理は理解しがたいものでしょうから、接し方について戸惑ってしまうのも無理はありません。

 しかし、よく言われているような「励ましてはならない」といった単発のマニュアルに従ってみても、それが表面的なものに終わってしまうことが多いようです。

 そこで今回は、周囲にいる人たちが「うつ」について少しでも理解を深め、表面的でない接し方ができるためにはどんなことが大切なのか、考えてみましょう。

なぜ「励ましてはならない」のか?

 「うつ」の方に対する間違った接し方には実に様々なものがありますが、いずれも「うつ」が起こるからくりが理解できていないところから来ている問題だと思われます。

第1回でも触れましたが、「うつ」とは、「頭」の一方的な独裁に対して、「心」(=「身体」)がある時点でたまりかねてストライキを決行した状態です(右の図参照)。

 「頭」とは《理性の場》であり、自己コントロールを志向する《意志の場》でもあります。それに対して「心」(=「身体」)の方は、大自然の原理を持っていて、欲求や感情を生み出す《意欲の場》です。そして、人間の生き物としてのエネルギーの中心は、ここにあります。

 このような人間の基本構造と「うつ」のからくりが理解できれば、なぜ「励ましてはならない」と言われるのか、そのエッセンスがはっきり見えてきます。

 つまり、「励ます」ということは、「頭」の《意志》による自己コントロールを再び強化せよと言っているわけですから、ストライキに対して軍隊を向けるようなもので、事態が泥沼化するのは明らかです。しかも患者さんの「頭」は、「自己コントロールが十分に効いて有意義な活動ができるような自分でなければ、自分には価値はない」という考えを持っていることが多いため、励まされても思うように動かない自分自身を情けなく思い、いっそう自己嫌悪に陥ります。これが場合によっては、自殺願望を強めてしまう恐れもあるわけで、だからこそ「励ますこと」が危険なのです。

小手先の気遣いは「うつ」には通用しない

 しかし周囲の人は、表向きは「励まし」たりしなくとも、一日でも早く「有意義な活動」ができるようになってほしい、と期待して待っていることが多いものです。もちろん、患者さんの一日も早い社会復帰を願うことは、現代社会に生きる周囲の方々にとっては、ごく当たり前な気持ちでしょう。

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泉谷閑示 [精神科医]

1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ


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いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。

「8人に1人が苦しんでいる!「うつ」にまつわる24の誤解 泉谷閑示」

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