「社内プレゼン」は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルです。どんなによいアイデアがあっても、組織的な「GOサイン」を得なければ一歩も前に進めることができません。そのためには、説得力のあるプレゼンによって決裁者を説得する技術が不可欠なのです。
そこで役立つのが、ソフトバンク在籍時に孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取り、独立後、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。
本書では、孫正義氏をはじめ超一流の経営者を相手に培ってきた「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、プレゼン資料の「型」を社内で統一することの深い意味について解説します。

プレゼン資料を「社内で統一」する企業が増えている理由写真はイメージです。Photo: Adobe Stock

プレゼン資料は「社内」で統一する

 私は、年間200社を超える企業・団体のプレゼン研修を任されています。

 そのなかで、近年、相談されることが増えているテーマがあります。それは、「社内でプレゼン資料を統一フォーマット化したい」という相談です。これは、私自身、長年にわたって提案し続けてきたことで、たいへん嬉しいことだと感じています。

 なぜ、社内で統一フォーマットすべきなのか?

 答えはシンプルで、そうすることによって、社内の意思決定スピードの向上や、業務効率化が大幅にすすむからです。

 私の著作である『完全版 社内プレゼンの資料作成術』では、

・本編スライドは5~9枚(詳しくはこちら
・ポジティブ・メッセージは「青」、ネガティブ・メッセージは「赤」(詳しくはこちら
・グラフは「左」、キーメッセージは「右」(詳しくはこちら

 などいくつもの効果的な「プレゼン資料の型」を提示していますが、こうした「型」を社内で共有することで、意思決定スピードや業務効率が大幅に改善するのです。

 例えば、ある提案者は5~9枚の本編スライドでプレゼンしたかと思えば、別の提案者は何十枚ものスライドを用意してくるようでは、決裁者は戸惑うばかりでしょう(そもそも、何十枚ものスライドで延々とプレゼンすること自体が非効率)。

 あるいは、担当者によってカラーの使い方がまちまちだったり、グラフやキーメッセージの配置が違ったりすれば、決裁者がスライドの内容を把握するのに時間がかかるのも当然のことでしょう。

 その結果、プレゼン内容を決裁者が把握するのに時間がかかるため、意思決定にも時間がかかる結果を招いてしまうのです。

 逆に、全員が同じ「プレゼン資料の型」を共有していれば、決裁者の「スライド把握力」が高まり、誰がどんな提案をしてきても「スライドのどこに何が書いてあるか?」「何が言いたいスライドなのか?」を一目で理解することができます。その結果、意思決定スピードも劇的に速くなるのです。

資料作成の労力を大幅に削減

 しかも、担当者のプレゼン資料をつくる労力も大幅に削減することができるでしょう。スライドを作るときに、いちいち自分の頭で考える必要がなく、「型」に沿ってつくることができるからです。

 プレゼン資料の作成に膨大な時間を費やすのは、本来望ましいことではありません。資料のオリジナリティにこだわって時間・労力を過剰に費やすのではなく、「型」に沿って手際よく資料をつくって、適時的確にプレゼンをすることこそが、スピード感のある事業展開をするうえで大切なのです。

同じスライドを多くの社員が共有する

 もう一つ、「型」を統一しておくことには重要な意味があります。

「型」が統一されていれば、誰かが作成したスライドを、別の人が容易に使うことができます。

 例えば、社内横断的なプロジェクトを進めているとしましょう。

 その場合、企画提案のプレゼンは「企画部門」が行いますが、その企画が商品化されたあとは、「営業部門」が顧客向けに営業プレゼンを展開していくことになるでしょう。ここで、企画部門が作成したスライドを、営業部門が適宜コピペすることができれば、非常に効率的です。

 ところが、社内で「プレゼン資料の型」が統一されていないと、それができません。例えば、企画部門では「4:3」のスライドサイズを使っているけれど、営業部門では「16:9」のサイズを使っていれば、簡単にコピペすることができません。

 あるいは、企画部門では「グラフは左、キーメッセージは右」にしているけれども、営業部門では「グラフは下、キーメッセージは上」にしていれば、企画部門のスライドを流用しようとしても、いちいちグラフとキーメッセージの位置関係を修正しなければなりません。

 逆に、「プレゼン資料の型」が統一されていれば、スライドの流用ははるかに簡単にできます。もちろん、企画部門の資料は「社内向け」ですから、外には出せないデータも含まれているなど、そのまま何の加工もせずに営業部門が流用できるケースは少ないかもしれません。しかし、それでも「型」が統一されていれば、その調整・修正作業は格段に効率化できるのです。

まずはチームで“スモール・スタート”

 このように、社内で「プレゼン資料の型」が共有・統一されていることには大きな意味があります。ただし、これを全社的に実現するためには、経営陣の積極的な関与が不可欠。それだけに、一朝一夕には実現することはできないかもしれません。

 しかし、そのような場合でも、私は、現場で“スモール・スタート”することをおすすめします。あなたに部下がいる場合であれば、チームでこの「型」に統一するといいしょう。きっと、あなたのチームの生産性が上がることを実感できるはずです。

 そして、その成果を背景に、上層部に全社的な統一を提案すれば、それを実現できる可能性もあるはずです。もしも、それが実現できれば、会社全体の事業スピードもどんどん加速していくに違いありません。ぜひ、チャレンジしていただきたいと願っています。

(本稿は、『完全版 社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)