「絶対達成」とは“大雑把な”話!?

横山 そうですね。「絶対達成」は大雑把な話ですから。

寺田 ええ!大雑把?「絶対達成」というと、ガチガチにキツイ感じがしますが、大雑把でいい?このギャップがいいですね。どういうことでしょうか?

横山 そもそも単純に目標を超えればいいんで。最近は、「目標は超えればいいんでしょ」と言われたら、言われてみればそうだな、という方も増えました。

寺田 「目標達成を目指す」というと、山登りのようなイメージがあるんですけど、「目標未達というリスクを回避する」と考えると、最後の目標数字が見えてないと絶対できないですよね。山登りよりも「川下り的なイメージ」がします。

横山 ええ。

寺田 『マインド本』のなかで、「時間は未来から流れてくる」とありましたけど、これは常に目標から逆算して、いま何をすべきかを追求することですね。いままでの「積み上げていく」目標達成とは、真逆のベクトルのような気がします。

横山 そうですね。実際やってみると、すごく納得感があるようです。目標から逆算して行動するというのは、誰もができます。最近は研修会場で、私自身が青年海外協力隊で行っていた南米のグアテマラの話もよくします。グアテマラにいた頃、約束の時間を守らない現地の人に悩まされたこともあったのですが、そんなグアテマラ人も、飛行機に乗るときは必ず出発時間までには空港へ到着します。つまり、期限から逆算して考えることができるということです。期限は固定されていて、基本的には「絶対」です。飛行場に時間どおり着かなかったからといって、飛行機がその人を待ってくれるということはありません。グアテマラの大統領だったら、もしかしたら飛行機の離陸を止めることはできるかもしれませんが(笑)。

寺田 横山さんの場合、「朝10時にお客様のところに訪問する」とか、「飛行機の時間」とか、すごく身近な例に喩えられますね。

横山 私はNLP(神経言語プログラミング)を深く学び、脳のしくみを研究しました。そのせいもあり、『部下本』にも書いた「脳の空白の原則」というものをよく活用します。脳に空白ができると、人はその空白を過去の体験で埋めようとします。ですから誰もが知っている体験を事例で紹介すると、「ああ、なるほど」と思ってくれるはずです。みなさん、誰もが知っている例を出すことで、「そう言われると反論できない」と受け止めていただけることも多いようです。

「横山節」に魅了されたところ

寺田 独特の「横山節」を語るうえで、その「反論できない」というのが、チャーミングなアプローチですし、「できない理由はない」という兵糧攻め的な言い方が印象的です。横山さんの実況ライブを初めてDVDで見たとき、「コレだ!!」と思いました。初対面の横山さんとはまったく違う人物がそこにいたのです(笑)。論理的に脳のしくみを解説しているかと思いきや、エモーショナルに臨場感たっぷりにたたみかけてきて、一瞬会場が凍りついた雰囲気になる。「~ですよね」というソフトな言い方をしていたと思ったら、いきなり「~だろ!!そうじゃないのか!!」という感じで激しく迫ってきた。あの強弱に、「この人はいったい何者なのか?」と、「脳に空白」を覚えました。2011年の正月休みは、他のことを一切やらずに、横山さんの「予材管理DVD」に釘づけでした。なぜ、横山さんは、ほかのコンサルタントと違う話し方や独自のアプローチができるのですか。

横山 『マインド本』にも個人的なエピソードを書きましたが、私自身が「できない人」でしたので、そういう人の気持ちがわかるからかもしれませんね。

寺田 『マインド本』を担当して初めて知ったのですが、横山さん自身、35歳までどん底のキャリアだったと。大学を出ていない横山氏が43歳のいま、年間100回超のセミナー&講演会を開催し、資産ウン兆円規模のメガバンクから、従業員20~30人規模の会社までを支援するために全国をひた走っている。以前は年間30回のセミナーを開催するのも難しかったわけですよね。こうなると、横山さんの35歳からの8年間は、すごい逆転人生ですよね。

横山 そうですね。私自身は、誰か特定の人にノウハウを教えてもらったわけじゃなくて、理論から入った感じですね。

寺田 どういうことですか? 理論から入ったというのは?

横山 やっぱり土台はNLPです。私は営業を経験していないのに、諸般の事情があって「営業コンサルタンティング事業」をスタートさせています。当時はやらざるをえない環境にいましたので、陳腐な表現かもしれませんが、もう死に物狂いですよね。絶対的な経験のなさを補うために、まず理論から入ってこうすればこうなるだろうと予測を立てました。でも、現実は厳しく、当然そのとおりにはなりません……(笑)。何をやっても試行錯誤の連続。毎日が実験。自分の脳にできた巨大な空白を、その日その日の体験で埋めていくしかありませんでした。毎日がそんな感じですから、大量に行動することでその理論が正しいんだ、ということを自分で証明していくしかなかったのです。

寺田 35歳という遅い段階でコンサルタントになったために、追い詰められていたからこそ、まずは理論から入ったということですか?

横山 確かにそうですよね。35歳のときに、日立製作所を逃げるように辞め、運よくコンサルティングのアタックスグループに入ってみたら、それ以前とは環境がまったく変わってしまい、目標は「絶対達成」でした。追い詰められるというか、大量行動せざるをえなかったので、脳の基本回転数がガーッと上がりますよね。「もうどうすればいいんだ?」とばかり思っていましたから。