『マインド本』が類書に比べ、圧倒的に差別化できている箇所は?

横山 あと、『マインド本』で他と圧倒的に差別化できていると私が思うのは、思考の「あたりまえ化」4ステップの<ステップ2>「わかっちゃいるけど状態」のことです。「なんでもいいから行動しろ」ではなく、「マインドチャージ」されるまでは待っていればいいんだよ、と。

寺田 「いつかやるから大丈夫、大丈夫」と。

横山 この箇所は結構共感してくださる人が多いんです。

寺田 この感想多いですね。これがあるからいいですよね。

横山 そうなんです。『マインド本』のアマゾンレビューに、「結局行動しろとしか書いていない」という趣旨が書いてあるのですが、その方は「選択的認知」が働いていて、私の意図を読み飛ばしているんですね。ただ多くの読者の方は共感してくださいます。

寺田 「大丈夫、大丈夫。いつかは必ず習慣化するから大丈夫」。このワンクッションが入っているから、いままでの本とは違うと。

横山 以前メルマガにも書いたんですけど、「自分を信用して待てばいいんだ」ということです。そのための自分とのラポール(信頼関係)なのですから。ところで、当社のある幹部の一人と雑談していて、「そろそろトレーニングして痩せたほうがいいんじゃないですか?」って指摘したら、「横山さん、メルマガに書いていたじゃないですか。時期がきたら必ずやるようになる。だから待てばいいって。だから私は待っているんです。そういう時期がいつか来るだろうって(笑)」と言い返されてしまいました。そういう人に対しては、相手が嫌がっても無理やり背中を押したいですけどね(笑)。

寺田 このように、「言い訳の隠れ蓑」に使われる場合はどうしたらいいんでしょう?

横山 プライベートなことで「いつかやれば大丈夫!」と言われると、ああ、そうですか。まあ、いいですけどねと言うしかないですよね。ただそれが仕事だと、「やれよ、早く」という話ですけど、ご自身の自己啓発ではそれ以上言えないですよね。「もうちょっと痩せたらいいんじゃないですか」って言いたい人もまわりにはいますが、「いやまあ、いつかやるから大丈夫よ」って。おもいっきり先送りじゃないかって思うんですけど(笑)。

「絶対達成シリーズ」の今後のゆくえ

寺田 なるほど。今後横山さんとしては「絶対達成シリーズ」をどうしていきたいですか?『部下本』の出版前からシリーズ化を企図していたという、私にとっては非常にめずらしいパターンですが、以前「シリーズも数がいくほど内容が深まっていくシリーズにしたい」とおっしゃっていました。今後のシリーズ展開については?

横山 まだまだ「絶対達成」のいろいろなテクニックがあります。やはり『部下本』でも、どうやってコミュニケーションしていったらいいかよくわからないでしょうし、本当に「現状維持バイアスをはずす」と言っても、では具体的にどうはずすかという話も、深い話があるので、それをもっといろいろなキーワードに則って書いていきたいと思っています。そして、最終的にはやっぱり「絶対達成」なんだよな、と受け止めてくれればいいと思うんですね。テクニックが後からついてくればよくて、何冊か読んでいるうちに、「やっぱり『絶対達成』だよな」って。「絶対達成」したほうがやっぱり楽しいし、面白い。キツイ話じゃなくて、そのほうが断然楽しいんだよと。

寺田 何かスポーツみたいな感覚なんですね。やり遂げて、結果も出て、楽しいよねと。

横山 それは誰もが経験していると思うんですよね。何か無理矢理でもやってみたら、意外とやってよかったな、達成感あるなと。それが味わえるんですから。

寺田 最後にこれだけは言っておきたい、ということはありますか?

横山【前編】でもお話ししたとおり、「絶対達成」というのは「大雑把」な理論だということです。「目標を越えさえすればいい」という発想なのですから。100点満点のテストで100点をとれ、と言っているわけではないのです。発想の転換だけで、気持ちは楽になるし、楽しくもなります。

寺田 なるほど。【前篇】【後篇】の2回にわたり、ありがとうございました。


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横山信弘(著者)
アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。1969年、名古屋市生まれ。年間100回以上のセミナーは5000名超の経営者/マネジャーを集め、常に満員御礼。企業研修は基本的に価格がつけられず、「時価」。それでも研修依頼はあとを絶たず、向こう8か月先まで予約は埋まっている。ポリシーとして、コンサルティングは質を保つため、年間7~8社しか請け負わない。著書に、『絶対達成する部下の育て方』『絶対達成マインドのつくり方』(以上、ダイヤモンド社)、『脱会議』(日経BP社)。

寺田庸二(編集者)
ダイヤモンド社書籍編集局第二編集部副編集長。著者は20~80代までこれまで全102冊担当。業界平均重版率が3割台のなか、自前企画の生涯重版率は8割4分。『絶対達成する部下の育て方』で処女作著者16連続重版(2003年12月~現在も更新中)。10万部超の単行本も数多く手がける。「技術と精神のドライブがかった本を!」「孫の世代まで読み継がれる本を!」「光の当たらないところに光を当てる本を!」が3大編集モットー。野球歴(軟式、準硬式、硬式)14年。