一富士、二鷹、三なすび、さらに四扇、五煙草、六座頭――、と続けば、初夢で見るには縁起がいいと言われているものだ。

 一富士は言うまでもなく日本一の霊峰、富士山のこと。

 二鷹には諸説あり、鷹狩りをする山の麓は“末広がり”だから縁起がいいとする説と、鷹が爪で獲物をつかむ、が夢をつかむに通じるとも言われ、さらには、これは実は富士山近くにある愛鷹山(あしたかやま)のことで、富士に次ぐ二番目の山から二鷹になったとの説もある。

 三なすびは、初物。もしくは、事を成すの語呂合わせだ。
 徳川家康が隠居した駿府で、高いものを順に挙げたのが始まりとも言われている。

 が、発祥はどうやら駿府ではなく江戸の駒込で、一富士も富士山のことではないのだそうだ。時代も江戸開闢の一七世紀初頭ではなく、八代将軍吉宗のころ。

 駒込にはかつて鷹匠屋敷が連なり、日本最古の“富士講”が組織されていた。また、土地の名産が“駒込茄子”だったことから、江戸っ子たちに、駒込は一富士二鷹三茄子で縁起がいい土地と言われたのが初夢に転じ、縁起物となった……、というのが由来のようだ。どの説を信じるかは個人の自由ではあるけれど。

 新春の初夢に富士山を仰ぐなんてのはなるほど縁起がいいように思えるものだが、二〇一三年の年明け早々、その富士山の入山をめぐって悪夢のような話が静岡県知事から飛び出した。

 富士山の入山料の徴収を検討する、というのである。

 話そのものは十年ほど前から出ていたとのことだ。いったんは県の外部有識者らが時期尚早との見解を示し、計画は立ち消えとなっていたが、富士山が世界文化遺産登録の推薦を受けたことから本格的な検討に入ることになった。

 川勝平太静岡県知事によると、富士山の環境保全が目的らしい。世界文化遺産に登録されれば……、ほぼ間違いなく登録はされるだろうとの予測が大半だが、そうなればこれまでよりはるかに多くの登山者が富士山を訪れるだろうことも必至。入山料を課して、登山者数を規制するのが狙いだ。もちろん、環境保全の財源を確保する意味もここには含まれる。