一方、旅行会社にとっては、そのような保証を検討するうえで雨天になる確率が重要になる。ここで1回の旅行代金が1万円のプランにおいて、平均すると10日に1回の割合で雨が降ると仮定しよう。つまり平均的には、10日分旅行を販売すると1回キャッシュバックが発生する見込みである。つまり、売上としては9万円となり、1万円はキャッシュバックされることが見込まれる。それを10日分で割ると、1万円の代金のうち、1000円分を留保しておくことが必要である。その時に、その1000円分を保険の掛け金のように考えることもできることがわかるだろう。

 しかし、これまでの天気の統計データから10日に1回程度雨が降るとされていても、実際に旅行商品を販売した時にどうなるかはわからない。旅行会社にとっては、雨が少ないという予報をもとに、少ないキャッシュバック発生率を前提に価格を設定することがあるかもしれない。そう考えると、雨天の日の確率と、留保すべき保険の掛け金との間には一定の関係があることがわかっていただけると思う。

公営ギャンブルによる確率とオッズ

 競馬等の公営ギャンブルに親しみのある読者には、賭け事の配当率と価格との間に関係があることは、今さら説明するまでもないだろう。競馬では、配当率を表すオッズは、当該馬券の購入金額の合計の逆数で決定されている。つまり、参加者の多くが勝つと見込んでいる、強い出走馬のオッズは低くなり、勝利した場合でもそのリターンは小さい。逆に勝つ見込みの少ない馬券のオッズは高配当が期待できるため、しばしば一攫千金を狙うギャンブラーに好まれる。

 この仕組みは、大勢の人の考えを数値化する方法としては優れている。この方法を応用するとシンプルな予測市場ができあがる。たとえば、知事選挙のような選挙をレースに見立て、候補者を出走馬とみなすのである。勝つ見込みが高い候補者はたくさん購入されるため、オッズは低い水準となる。このオッズで各候補者の相対的な当選確率を知ることができる。

 ただし、公営ギャンブルは許可された数少ない公的団体のみが許可されるものであり、現金で類似の行為を行うことは法的に許されない。しかし、参加者が参加するモチベーションを保てるのであれば、必ずしも現金で取引する必要もない。

 そのような、競馬のような仕組みが最もシンプルな予測市場である。一般にパリミューチュアル方式と呼ぶ。これは後述する株式市場方式よりもわかりやすいため、手軽に予測を行う場合やエンターテイメントとして予測市場を運営する場合には適している。