株式市場で行われる可能性のやり取り

 上記で説明したことは、実は株式市場をはじめとする様々な市場で一般的に行われていることである。特に、株式の価格や会社業績の情報が十分に行き渡る市場では、その市場は効率的だと言われ、株価はその企業の将来的な収益を織り込んで決定されていると考えられている。つまり、今後儲かりそうな会社の株は値上がりするし、その逆も成立する。

 たとえば、この夏は猛暑になりそうだからビールの消費が増えるだろうと考える人は、ビール会社の株を買うかもしれない。最近の例では、国土強靭化政策を唱える自民党政権の誕生が確実な情勢になるに連れて、土木・建築業界の関連銘柄の株価が上昇する現象が見られた。たとえば、麻生フオームクリート(ジャスダック・1730)の株価は、告示日前日の12月3日は114円だったものが、選挙後の最高値で472円(12月21日終値)と高騰している。

 少し説明が長くなったが、市場で取引される株式やモノの価格は、今後見込まれる価値に応じて影響されることがわかっていただけるのではないかと思う。

 予測市場は、その原理を将来の出来事にあてはめ、予測に利用するものだ。誰しも日々の企業経営や暮らしの中で予測したい出来事はあるだろう。その際に、予測したいテーマに応じた市場を設計して、多様な意見の集合から価値のある情報を抽出する技術が予測市場なのである。

 今回は、身近な保険の仕組みから予測市場の基本的な原理を説明した。次回は、ソーシャルネットワークの普及にともなって注目される「集合知」と予測市場との関係について説明しよう。

(次回は1月22日更新予定です。)


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