経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第22回】 2013年1月22日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【公文俊平氏×武田隆氏対談】(中編)
たくさんの「いいね!」は、もういらない!?

公文俊平が語る「富めるものはますます富む」不平等へのカウンター

テクノロジーに支えられた「ネットワーク社会」というと、みんなが平等につながっていくようなイメージを思い浮かべがちだが、実際にはそうはならない。ツイッターにしても、多くのフォロワーを持つのは少数の著名人で、一般の人にはなかなかフォロワーが集まらないものだ。一部にアテンションが集中するのはどこか不公平だと感じる人もいるかもしれない。
だがちょっと待ってほしい。「どれくらいつながっているか?」という量的な捉え方だけでなく、「どのようにつながっているか?」という質的な捉え方も必要ではないだろうか?情報社会学者 公文俊平先生を迎えての対談は、ネットワークというものについても鋭く斬り込んでいく。

日本はハイペースで近代化を進めてきた

公文 近代化の過程の「国家化」「産業化」「情報化」という流れ(前編記事内、「近代化の三局面」の解説を参照)は、西洋もアジアも共通しているのですが、ヨーロッパと日本で一つ違う点があるんです。

武田 どのような違いですか?

公文俊平(くもん・しゅんぺい)
多摩大学情報社会学研究所所長/多摩大学教授。
1935年高知県生まれ。1957年東京大学経済学部卒、59年同大学院修士課程修了。1968年米国インディアナ大学経済学部大学院にてPh.D.取得。東京大学教養学部教授を経て、1993-2004年国際大学グローバル・コミュニケーション・センター所長。2004年4月より多摩大学教授・多摩大学情報社会学研究所所長就任。現在に至る。主な著書として、『情報文明論』(1994年、NTT出版)、『情報社会学序説』(2004年、NTT出版)、『情報社会のいま』(2011年、NTT出版)など。他に共著として、『文明としてのイエ社会』(1979年、中央公論社)、『情報社会学概論』(2011年、NTT出版)がある。

公文 それぞれの局面が現れるペースです。ヨーロッパは200年ごとに、「国家化」「産業化」「情報化」の局面が訪れています。16世紀の後半から国家化が始まり、18世紀の後半に産業化が始まった。そして20世紀の後半から情報化が始まって、今にいたります。ところが日本の場合は、軍事力の増強を主とした国家化が始まるのは明治20年前後です。

武田 日本は300年ほど遅れて、国家化が始まっているのですね。

公文 そう。そこから、内閣ができて、憲法ができた。そして日清戦争、日露戦争に勝利する。まさに、司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』で描かれている時代です。ここまでで国家化が60年で進んだといえるでしょう。そこから、さらに軍備を拡張して世界大戦に突入していく。結果、第二次世界大戦で敗戦し、ほとんどの都市が焼け野原になるわけです。

武田 しかし、戦争の間に産業化を本格的に進める力がついていった。

公文 そうです。さらに戦後の経済成長で、産業化が30年間爆発的に進んでいきます。第一次世界大戦から、戦後の30年にかけて、たった60年で産業化(重化学工業化)を達成したんです。

武田 ヨーロッパが200年かけて進めてきた国家化、産業化をそれぞれ60年で成し遂げてしまった、ということですね。

公文 はい。そして、その産業化は1970年代半ばが頂点で、そのあとはバブルになり1990年あたりでそれが崩壊して不況に陥っていきます。でも、情報化は、1970年台半ばからいろいろな新しい動きが起こり、2005年くらいに本格的に立ち上がってくる。

武田 そのペースでいくと、2030年には情報化が成熟し、次の局面に入るのではないですか?

公文 と、思うでしょう。でもそうはいかないのではないか、と私は懸念しています。なぜかというと、そのペースでいくのであれば、もう新しい憲法が出てきていてもいいころなんです。

武田 なるほど。明治憲法、昭和憲法ときて、平成の世に合わせた平成憲法ができていてしかるべきなのに……。

公文 できていない。ここへきて、社会の変化はペースを緩めているように感じます。憲法改正については、最近話題にのぼることが多くなったとはいえ、まだ議論している段階ですから。情報化についても、選挙活動にインターネットを利用することすら解禁されていない。著作権問題もむしろ規制を強める方向に進んでいます。

武田 たしかに、新しい社会に制度が適応できていない状態が続いているように感じますね。

公文 これまでは先進国をモデルにして一気に進めることができましたが、今回の情報化においては、明らかに進んでいる国というのがありませんからね。

武田 明確なロールモデルがないんですね。エイベック研究所が得意とするソーシャルメディアを使った企業と顧客との関係構築についても、世界でもあまり事例がないんです。なので、私たちの事例は、海外の方々からも評価をいただいています。これは経営者としてはうれしいことなのですが……。

公文 日本全体の情報化という面でいうと、やや困ったことといえるかもしれませんね(笑)。

武田 これまでの日本のIT企業は、いち早くアメリカのトレンドをキャッチし、それを真似ていればうまくいきました。アメリカで流行しているものは数年遅れで日本でも必ず流行したからです。いわゆる「タイムマシン経営」と言われる方法をとる会社が多くありました。先を行くアメリカをロールモデルとして成功したわけです。ただ最近、インターネット事業領域の多くの部分で、日本とアメリカの差はどんどんなくなっています。

公文 第1次情報革命は、これからの20〜30年が本当に勝負になってくると思いますよ。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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