カンボジア 2013年1月17日

カンボジアにとって
ミャンマーという「ライバル」が存在する意味

朝日新聞のマニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住、現地のフリーペーパー編集長を務めた木村文記者が、カンボジアにとってのミャンマーの存在についてレポートします。

メディアはミャンマーに熱狂しすぎ?

 ミャンマーが、日系ビジネスの熱視線を浴びている。2011年に始まったテイン・セイン大統領による民主化路線が、「後戻りしない」とみるや、日系に限らず、世界各地から視察が相次いでいる。

 人口約6000万、40歳未満が7割を占める若い国。豊富な天然資源、勤勉で教育熱心といわれる国民性、インドと中国に挟まれた地の利。興奮する気持ちは、よくわかる。10数年前、私が新聞社のバンコク特派員としてミャンマーを取材で訪れていたころ、この巨大な「眠れる象」が目覚めたらどんなことになるのだろう、と同僚たちとよく語り合った。

 そのころは民主化への糸口さえなく、軍事政権下での取材は困難を極めた。そもそも取材ビザがめったに下りない。中国の新華社通信だけは支局を開いていたが、そのほかの海外メディアは常駐が許されず、普段はタイなど国外からモニターするしかなかった。そして軍政が、蛇口をひねるかのように出したり、出さなかったりする取材ビザを求めて、バンコクのミャンマー大使館に通った。

 軍政は、自宅軟禁下にあったアウン・サン・スー・チーさんの「軟禁解除」など、国際社会にアピールしたいニュースがあると、海外メディアにビザを出した。「いいように使われている」と自覚しながらも、堂々と取材ができるわずかなチャンスを逃すまい、とビザを手にした。取材ができるといっても、ミャンマー国内では行動を監視された。当時の首都であったヤンゴンから地方へ行くことは難しかったし、人々に気軽にインタビューすることもできなかった。私たちが接触した相手は、軍政当局に目をつけられてしまう恐れがあったのだ。

 だから、民主化が始まった今のミャンマーに最も熱狂しているのは、マスコミかもしれない。と、いう言い訳を長々と書いたのは、先日、カンボジア駐在のある日系ビジネスマンに「メディアはミャンマーの現状を正しく伝えているだろうか。日本からミャンマーを訪れたビジネスマンたちが『報道とは違う』と言うのを聞いた」と、言われたからだ。

 確かに、壮大なポテンシャルを秘めた国ではあるが、期待感が独り歩きしている部分があるかもしれない。工業団地にしろ、道路や電気、通信などのインフラにしろ、投資の受け皿がきれいに整っているわけではない。業種業態にもよるが、実際に視察はしたものの「進出はまだ先」と感じたビジネスマンは多いのではないか。

 実は、日系企業の「ミャンマー詣で」が始まる以前から、ここカンボジアでは「ミャンマーリスク」が懸念されていた。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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