ベトナム 2013年1月18日

インフラが弱いベトナム
停電による私の個人的経済損失は、ざっと100万円

日本で15年間の編集者生活を送った後、ベトナムに渡って起業した中安記者が、ベトナムの困った停電事情についてレポートします。

オフィスの必需品、それは自家発電装置に無停電電源装置

 ベトナムは社会的インフラが弱いと言われる。そのいちばん分かりやすい例は停電だろう。人口が900万人近く、ベトナム随一の大都会であるホーチミン市ですら停電は珍しくない。

 取引先がベトナムの企業ならともかく、日本の会社の場合、「すいません、今日は停電なので締め切りに遅れます」という言い訳は通じない。そこで停電になっても業務に支障がないよう、こちらもいろいろ対策は考えている。

 まずは自家発電装置だ。オフィスが入居するビルを探す場合、自家発電装置があるかどうか、というのは必須の確認事項だ。Aクラスと呼ばれる高級オフィスビルは自家発電装置がついているのは当たり前だが、1㎡20ドル以下、Cクラス以下のビルになると自家発電装置が備わっていない、もしくはあっても、供給できる電力が少なくて業務に支障が出る場合もある。

 以前に、一軒家をオフィスとして借りていたときは、当然自家発電装置はなく、大家に言うと「欲しければ自分で買えば?」とのことだった。自家発電装置はディーゼルで動くものとガソリンで動くものの2種類がある。前者のほうが安いが、大きくて場所を取るうえ、うるさい。ガソリンタイプは小さいが、値段がディーゼルタイプの何倍もする。

 結局、ディーゼルタイプのものを中古で買った。「これで停電対策は万全!」と思っていたら、実際に停電になり使ってみると、地響きと騒音で落ち着いて仕事ができない。さらに、もうもうと上がる黒煙のため近所の民家から「ウチの家の白壁が真っ黒になったので、塗り直しの費用を出して欲しい」などと苦情が出る始末。100万円近くの大金を投じて購入したのに、結局、引き取ってもらい、「停電の日は自宅作業」ということにした。

 突然の停電も珍しくないので、その時に備えて、すべてのデスクトップパソコンには無停電電源装置(UPS)をつけている。これがあっても、電力が持つのは5分程度だから作業を継続して行なうことはできない。作業中のファイルを保存してシャットダウンして、あとは電力の回復を待つことになる。

 自家発電装置が入っていても供給される電力が十分ではなく、「室内の照明とパソコンは使えるが、エアコンは使えない」という場合もある。常夏のホーチミンで気温が30度を超える日中、エアコンなしは辛い。以前にいたオフィスは窓がはめ殺しで、窓を開けることができなかった。しかも屋根はトタン。おそらく室内の温度は40度を軽く超えていたことだろう。30分も作業をしていると呼吸困難になり、外に出ると30度を超えている外気がひんやりと感じられたものだ。

オフィスビルの前に置かれた発電機。停電時に発電機をレンタルしてくれる業者もいる【撮影/中安昭人】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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