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1月21日 18時0分
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「アベノミクスでバブルが起きるだけ」という駄論 - 村上尚己「エコノミックレポート」

2012年11月半ばから、アベノミクス相場が続いている。一方、1月4日レポート「金融緩和を邪魔する抵抗勢力」などでお伝えしているが、積極的な金融緩和によって脱デフレを目指すアベノミクスを邪魔しようとする勢力も、メディアで散見されるようになった。

こうした中で、「アベノミクスで安倍バブルが起きるだけ」という警鐘をならす識者が最近現れている。ただ、筆者からみると、その多くが、テレビや週刊誌などに採りあげられるだけの駄論にしか見えない。まずは、アベノミクスで実現しようとしている、日本銀行による金融緩和強化、そして+2%の物価目標の設定、などが何なのかを冷静に考えてみよう。

これらのメニューは、既に米FRBなどが先行して実現している政策である。具体的には、米FRBは2010年以降、量的金融緩和の規模を増やし、FRBの資産規模はリーマンショック時から約3倍まで拡大している(日本銀行のバランスシートは1.4倍にしか増えていない)。そして今後も、失業率の改善などが実現するまで、量的緩和を拡大すると宣言している。なお、FRBは2012年2月に物価目標+2%を公式に設定している。

つまり、物価が安定して2%前後で推移していても、金融緩和を緩めないFRBの政策を、少なくとも日本銀行が見習うべし、というのがアベノミクスである。物価安定の責任を持つ日本銀行が、他の中央銀行と同様にきちんと仕事をするということだ。

こうした中央銀行の政策によって、なぜ「バブルが起きるだけ」ということになるのか、筆者には、残念ながら説得力がある見解を聞いたことがない。これまでデフレを放置してきた金融政策の正常化によって、日本経済と金融市場が元通りに戻る、という当たり前のことなのである。

「アベノミクスで安倍バブルが起きるだけ」という識者は、日本銀行に先立って金融緩和の強化を行っている米国を、まず心配すればいいのではないか?日本でバブルが起きるのであれば、米国や英国では「バブルの予兆」があってもおかしくない。しかし、金融市場に携わっているプロにとって、米欧などで、株式や不動産市場で深刻なバブルを心配する声は寡聞にして聞かれない。

例えば、米国のダウ平均株価は、先週末2007年12月以来の水準まで上昇、リーマンショックが起きる前の水準まで戻った。この米国株の動きもバブルなのか?米国株市場では、むしろ、「米国株価がいかに割安であるか」という議論の方が多い。

例えば、米国株市場の予想PERは、10倍台前半と歴史的にみて低い。市場が想定する利益と比べて、株価は決して割高にあるとは言えない(グラフ参照)。言い換えると、PERの逆数(利益/株価)である株式の益利回りが高い。つまり、株式に投資するリスクをテイクするには、ハードルが依然として高いと投資家が感じているということだ。


数字で言えば、米国株の益利回りが7%前後。これから、株式市場における平均的なリスクプレミアム(5%)を差し引いても、2%前後の「高いリターン」が米国株市場で要求されている。これは、米国10年国債金利と同じで、つまり株式市場で「将来の利益成長がほぼゼロと想定されている」稀な状況にあるということだ。

これは、現在の米国の金融市場の大きなパズルで、「長期的な米国の企業利益をゼロと想定している」も解釈の一つに過ぎず、いくつか仮説が考えられる。ただ、いずれにしても米FRBはこれまで大胆な金融緩和政策を行ってきたが、「株式市場がバブル」というよりも、「なぜ米国株は割安なのか」がマーケットにおける議論なのである。

「アベノミクスで安倍バブルが起きるだけ」という人は、もう少し世界の金融市場や経済状況を幅広く見渡して、今、日本で起きている事実を大局的に考える必要があるのではないか。個人的な思い込みだけでは、投資の世界で負けるだけである。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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