総務省統計局のサイトと並んできわめて有用な情報を提供してくれるのは、国税庁のホームページである。

 有用な情報があるだけでなく、サイトが利用しやすい構造になっている。これを見ると、利用者の立場を考えて作ってあることがよくわかる。

 これまで述べたように、多くの官庁サイトは、利用者の便宜でなく、情報提供者の都合で作られている。したがって、税に関する情報であれば、制度に従って(つまり、税法に従って)整理されていても、不思議ではない。仮にそのようになっていると、税制を知らないかぎり必要な情報が得られないことになる。

 国税庁のホームページでは、制度に従った情報提供もなされているのだが、納税者の立場で知りたい形でも提供されている。たとえば、「金(きん)の入れ歯を作ったとき、それは医療費控除の対象になるのか?」といった形で情報が提供されている。

 国税庁は、官僚機構のなかで、国家権力が最もあからさまな形で現れるところだ。払いたくなくとも強権的に税金を取られてしまうわけだし、ごまかしをして発覚すれば、面倒なことになる。できれば近づかないですませたい役所だ。

 同じように強権的な機構である警察は、悪事を働かなければ、一生近づかないですむ。しかし、給与所得以外の所得を得ているかぎり、税務署と無関係でいることはできない。

 だから、国税庁や税務署が「まともな」役所であることは、きわめて重要だ。納税者としての私は、国税庁や税務署に親しみを抱いたり好きになったりはけっしてできないが、日本の官僚機構のなかで最も良質な部分であることは認めたいと思う。それが、ホームページにも現れている。

 後の回で述べるつもりだが、社会保険庁と国税庁のホームページを比べると、差は歴然としている。社会保険庁のホームページを見てきた私にとって、暴露されたずさんな年金記録問題は、不思議でも何でもなかった。国税庁が社会保険庁と異なるレベルの官庁であったことは、日本国民にとってせめてもの幸せである。