MVNO
携帯電話やデータ通信のインフラを他社から借りて、サービスを提供する“MVNO”が、最近にわかに注目され始めた。IIJはその代表格だ。

 “MVNO”という言葉をご存じだろうか? 「Mobile Virtual Network Operator」の頭文字を取った略語で、日本語に訳すと「仮想移動体サービス事業者」である。

 いわゆる“回線借り事業者”と考えればよく、携帯電話やデータ通信のインフラを他社から借りて、サービスを提供している企業だ。

 実は、以前からMVNO事業者は存在した。トヨタ自動車やセコムが独自のサービスを展開していたのだ。この種の事業は、内容が限定されるので、ユーザーにとっては回線購入の選択肢として意識されず、目立たなかったという経緯がある。

 ところが、ここに来て日本通信やIIJ、So-netなどのサービスがスタートし、がぜん市場が賑やかになってきた。

 携帯電話の場合は、事業者が変わるとメールアドレスが変わるなど、ユーザーにとっていくつかの問題がある。ところが、データ通信の場合には、基本的には通話をしないから、どの事業者を利用しても不便はないのだ。

 とはいえ、「借りた回線を販売して価格以外の特徴が打ち出せるのだろうか」という素朴な疑問が残る。今回は、このポイントを中心に取材してみた。

 株式会社インターネットイニシアティブの三木庸彰・営業本部マーケティング企画開発部課長は、次のように説明する。

 「インフラとして異なるのは、川上の部分です。つまり、端末の電波を拾う基地局はイー・モバイルさんの設備を利用しています。さらに、インターネットにつながる部分では、IIJの設備を利用します。インフラが若干異なるので、違いが出る可能性はありますが、ほとんど意識できないレベルでしょう」

 当然だが、使用上の差はなく、決定的に違うのはビジネスモデルだ。

 たとえば、IIJは法人ユーザーが主なターゲットで、ドコモとイー・モバイルの回線を提供している。単にデータ通信の回線を販売するだけでなく、セキュリティ対策やルーターの提供、マルチキャリア対応などの付加価値で差別化しているのだ。

 さらに、法人向けの料金プランでは、価格でも差を付けている。すでにIIJが持っている営業力や既存ユーザーへのセールスでも、キャリアとは異なる強みがある。

 では、それほど法人向けのサービスで強みを発揮しているのに、最近個人向けのサービスにも力を入れているのは、何故だろうか?