株式レポート
1月22日 16時58分
マネックス証券

第32回  バブルの見分け方 - 広木隆の「投資の潮流」

昨年11月半ばに衆院解散が宣言されてからの2カ月あまり、株式市場は活況に沸き、その間、株価は大幅に上昇した。デフレ脱却を目指す安倍政権の大胆な経済政策、いわゆる「アベノミクス」を好感した買いが相場上昇の原動力となっている。短期間で一本調子に駆け上がった相場だけに、世間の一部には早くも「バブル」という言葉が聞かれるようになった。旗振り役は週刊誌。「安倍バブルに乗り遅れるな!」「安倍バブル、株も土地もこんなに上がる!」どういう論法かは知らないが「日経平均3万円も見えてきた」と誠に威勢がよい。

週刊誌ばかりではない。識者、市場関係者のコメントにも「バブル」という言葉が散見されるようになってきた。「バブル」の定義は難しいが、文字通り「泡沫」であり、いつかは弾けるからバブルなのであろう。所詮、弾けてしまう価格形成ならば、バブルの発生は一般には歓迎されるべきものではない。弾けた後の痛みが大きいからだ(この点についてはこちらもご参照→【松本大のつぶやき】 バブル)。それに先立って松本はこんなことを述べている。築地市場の初競りで大間産のマグロが1億5千万円という驚異的な高値で競り落とされたことに触れての記述であった。

 「値段は価値か?儲けることが価値とは云いませんが、或るモノを買う場合にはそれでそのモノ自体で儲かるか損するかは何かしらの意味でそのモノの価値と関係がある筈で、そう考えるとモノの価値と値段の関係は乖離している、或いは乖離し得ると云えます。」

筆者は「年頭所感:アムラーと失楽園」でそれと反対のことを書いた。「出来た値段が価値である」と。そうした行き過ぎた市場礼賛、マーケット至上主義に警鐘を鳴らす目的で、有名な骨董商の言葉を引用したのである。言わんとすることは松本と同じ、市場で形成される値段は本源的価値から乖離することがあるというものだ。その乖離が行き過ぎた状態を「バブル」の発生というのだろう。

そうなると、バブルかどうかを見極めるには本源的価値を知らねばならないことになる。株について言えば、理論株価はその企業が生み出すキャッシュフロー(配当など)の現在価値合計だ、という考え方がある。配当を生み出すもとになるのが利益である。株式会社の究極の目的は株主価値の増大を図ることで、端的に言えば利益を稼ぎ出すということに尽きるだろう。結局は企業の稼ぐ力、それが本源的な価値であると捉えてよいのではないか。利益と、その利益の蓄積である純資産とを見ていくのは企業価値を測る一番基本的な方法である。

その本源的価値である利益や資産価値との対比で株価を評価する指標(バリュエーション指標)の代表例が株価収益率(PER)や純資産株価倍率(PBR)である。しかし、それらの指標に絶対的な適正水準というものはない。縦横斜め、いろいろな角度で見て検証するほかはない。ヒストリカルに(過去との比較で)、クロスセクショナルに(市場横断的に)、インターナショナルに(国際的に比較して)。そういう複眼的な視座を持つことが大切である。

バブルの予兆を知る、もうひとつの方法は、株式投資と最も縁遠いと思われる人たちの言動を観察することである。大恐慌の時代のウォール街なら靴磨きの少年、現代の日本なら、さしずめ女子大生や若いOLだろう。普段はおしゃれやグルメにしか興味がない彼女たちがマネー誌を読み始めたら「危ない」と思ったほうがいい。幸いなことに、筆者が付き合っている女の子たちの口からは「ヴィトンのバッグ、買って~」としか出てこないから、まだ大丈夫である。



(チーフ・ストラテジスト 広木隆)

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(マネックス証券)


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