2013年1月18日、厚生労働省・社会保障審議会の生活保護規準部会が、報告書を取りまとめた。5年に1回行われる生活保護基準の見直しに関する議論に、一応の結論が出たことになる。

以後、「この報告書を受けて、政府与党と厚生労働省では、生活保護基準を引き下げる方向とした」という報道が続いている。

今回は、この報告書が何をどう検証し、どう結論づけたのかを検証したい。そこに「生活保護基準は引き下げられるべき」を読み取ることは可能だろうか?

「生活保護基準引き下げ」という結論は
報告書のどこにもない

 2013年1月18日、社会保障審議会・生活保護基準部会(以下「基準部会」)の第13回が開催された。同日、報告書が取りまとめられ、1月21日に公開された(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002szwi.html)。

「基準部会」は、2011年4月19日に第1回が開催され、2012年11月9日までに11回の議論を重ねてきた。第12回の開催は、衆議院が解散したことを受け、新政権成立後まで見送られていた。

「生活保護10%引き下げ」への疑念<br />厚労省報告書から読み取れない保護費削減の根拠は?2013年1月16日の第12回基準部会会場。抽選に漏れた筆者は傍聴できなかった

 2013年1月16日に第12回基準部会が開催され、ここで報告書案が検討された。翌々日の1月18日、第13回基準部会が開催され、最終的な報告書の文面が検討された。

 筆者は、第12回・第13回とも傍聴の抽選に漏れたため、傍聴することはできなかった。筆者の知る範囲だけでも100名以上が傍聴を申し込んでいたが、そのうち、当選したのは各々1名ずつであった。もともと、会場は厚生労働省内の会議室で、それほど広くない。傍聴可能な人数は、最大で30名程度と考えられる。しかし、傍聴した人々によれば、傍聴席には空席が目立ったそうだ。

「生活保護10%引き下げ」への疑念<br />厚労省報告書から読み取れない保護費削減の根拠は?第12回基準部会近くの廊下。会場に入って取材しているTV局クルーの機材が置かれている。ふだんの筆者に、「記者クラブ羨ましい」と思う場面はほとんどないが、こういう時にはやはり「羨ましい」と思ってしまう

 第12回基準部会が開催されていたその時、筆者は別の用件で、厚生労働省内にいた。基準部会が開催されているその会議室の前に行ってみて、「ダメでもともと」と考えつつ入場を懇願し、予想通りに断られた。その時、人の出入りでドアが開き、丁寧な言葉づかいながら強い調子で何かを主張する女性の声が聞こえた。引き続き、同様に主張する男性の声が聞こえた。それぞれ、委員の岩田正美氏と駒村康平氏の声に似ていたが、確信はできない。岩田氏は社会福祉学、駒村氏は経済学を専門とする学識経験者で、いずれも、福祉論者として知られている。

 いずれにしても、報告書はこの時点で、ほぼ、まとめられていた。傍聴できた方の話によると、「引き下げとなると、たとえば『子どもに習い事を諦めさせる』というような影響が考えられるので、いきなり引き下げるというわけにはいかない」というような議論もされていたという。