中国 2013年2月1日

日本人の私が
あえて日本人がいない中国の地方都市で働く理由

湖南省の中南大学大学院在籍中に邱永漢氏と出会い、卒業を待たず、2005年から氏が亡くなる2012年5月16日まで秘書として中国ビジネスと中国株を直接学んだ上田尾氏。なぜ中国に留学し、ビジネスをするようになったのかをレポート。

中国の辺鄙な都市で働いている理由

 私は現在、中国内陸部にある安徽省の省都・合肥で農業会社と不動産開発の仕事をしています。なんでこんな辺鄙な場所で、日本人の私が日本企業ではなく、地元の中国企業で会社幹部として働いているのか……。

 ここに辿り着くまでにいろいろな経験と出会いがありました。そして今でもたくさん勉強し、さまざまな人との出会いを繰り返しながら、願うべくはさらなる高みへと向かっているところです。

 他人から見れば、安徽省なんていう田舎で、それも地元の会社で働くなんて、あいつの人生はメチャクチャで失敗の道を真っしぐらに駆け下りていると思われるかもしれません。しかし私はこれまでもずっと私の原則に従って進み続けていますし、これからもその道を歩み続けるだけです。

 原則といっても、最初のうちは何となく行動していただけなのですが、今から思い返せば共通してそのような行動をこれまでとっていたということです。それを勝手に自分で偉そうに「原則」と言っているだけなのですが、最初にこれまでの経緯をかんたんに紹介させてください。

 とはいえ、私はべつに経営能力があるとか、経済の分析ができるわけではありません。ただ厳しい中国ビジネスの世界で生き残っていくために、どのような行動をとるべきか必死に考えてきただけです。「こんな奴もいるんだな」という程度に読んでいただければと思います。

とにかく広いところで仕事がしたい!

 私の原則は、今から思えば、大学を卒業してはじめて就職したところから始まりました。

 私は地元広島のホテルに入社し、入社後はフロントに配属されました。フロント内の限られたスペースで、チェックイン、チェックアウトの業務や宴会の打ち合わせをするだけの狭い世界で、2年間ほど、とくに大きな目標も夢もなくただ毎日を過していました。

 ところがある日突然、この狭い世界が嫌になり、どこか広い所で仕事がしたいなぁと思うようになり、気がついたらアメリカ・オレゴン州のリンゴ農場でメキシコ人と一緒に働いていました。その当時は英語をほとんど話せず、メキシコ人たちも英語がわからないため、身振り手振りと簡単な英単語だけで意思疎通を行ない、何とか仕事をこなしていました。

 ホテルのフロントとは違い、望んでいた(?)広い(というか広すぎる)リンゴ農場をトラクターで走りまわる生活を2年間……。俺はこれからどうするんだ? しゃべれるようになった英語とスペイン語で、日本に帰ってまたホテルに就職するのか? と日々考えるようになりました。

 その頃(2001年)はアメリカでも日本でもみんなが「これから中国の経済が伸びる」「中国の時代が到来する」と口を揃えて言っていました。実際、外から日本を眺めてもパッとしないなか、勢いよく輝いている中国の姿を見て、「よしっ! 今度は中国で何かチャンスをつかんでやるぞ」と思い、気がつけば北京の大学に語学留学をしていました。それが私の中国生活の第一歩、2002年2月22日のことです。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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